― 在留資格の理解と同様に重要な「会社として整えるべき管理体制」とは ―

なぜ建設業では「外国人活用」と「在留資格」が切り離せないのか

建設業界では、慢性的な人手不足を背景に、外国人労働者の活用がすでに特別なものではなくなっています。一方で、建設業は他産業と比べて、法令・許認可・現場管理が複雑に絡み合う業界でもあります。そのため、外国人を雇用する際には、

  • どの在留資格ならOKなのか
  • どんな業務に従事させてよいのか
  • 誰が、どの立場で起用を判断するのか

といった点を曖昧にしたまま進めてしまうと、後から大きなリスクとして表面化することがあります。

意識しなければならないのは、在留資格の話は「外国人本人の問題」にとどまらず、「会社の管理体制の問題」につながっていくという点です。本記事では、建設業で現実的に活用可能な在留資格を整理したうえで、会社として何に目を向けるべきかを解説します。


建設業で検討される在留資格の全体像

本社・管理部門では「技術・人文知識・国際業務」が検討されることもありますが…

建設業で外国人を雇用する場合でも、本社の事務職や管理部門などのいわゆるホワイトカラーの職場においては、「技術・人文知識・国際業務(いわゆる「技人国」)」が検討される余地はゼロではありません。

ただし、建設業の業務は、

  • 現場との関わりが避けられない
  • 業務内容が実務寄り・技能寄りになりやすい

といった特性があるため、技人国が主流になるケースは正直言って多くありません。そのため、本記事では技人国については補足的な位置づけと考え、建設業の現場に直結する在留資格に焦点を当てます。

建設業の現場で現実的に使われている在留資格は主に3つ

現在、建設業の現場で実際に活用される在留資格は、主に次の3つのグループに集約されます。

  • 育成就労(技能実習制度の後継制度)
  • 特定技能(建設分野)
  • 定住者・永住者

多くの企業は、最終的にこの3つのいずれかを選択することになります。


それぞれの在留資格は「性質の異なる制度」

ここで重要なのは、これらの在留資格はどれも「外国人が建設業の現場で働ける」という共通点はあるものの、そもそもの目的が異なるため性質が大きく異なるという点です。

人材育成を前提とした制度:育成就労

育成就労は、技能実習制度の運用を引き継ぎ、「人材育成」「技能の習得」を前提とした在留資格です。建設業では、

  • 将来の戦力育成
  • 長期的な人材確保

を目的として検討されることが多い在留資格ですが、その分、会社側の管理・教育体制の確立が前提条件になっています。

即戦力と管理責任がセットの制度:特定技能(建設分野)

特定技能は、一定の技能や経験を有する人材をイチから育てるのではなく即戦力として受け入れることを想定した制度です。一見すると使いやすそうに見える反面、

  • 受入れ機関としての義務
  • 支援体制
  • 業務内容の管理

など、会社が負う責任が軽いわけではありません。類似職種であれば転職も認められているため「採用できた」「申請が通った」と安心できる制度ではない点に注意が必要です。

就労制限はないが油断しやすい:定住者・永住者

定住者(日系○世)や更新手続きが不要な永住者は、原則として就労内容に制限がなく、雇用形態についても大きな制約がありません。そのため、建設業においては、

  • 「日本人と同じ感覚で使える人材」
  • 「在留資格の点では特に問題になる要素が少ない」

と受け止められることが多い在留資格です。実際、建設業界では、南米からの日系人や長年日本に住んでいる外国人など、定住者・永住者として安定的に働いている人材も多く存在します。

ただし注意したいのは、法律上の就労制限がないことと、会社として管理が不要であることは全く別だという点です。

建設業の場合、

  • 建設業法上、どの業種の工事に従事させるのか
  • 現場への配置や役割分担が適切か
  • 安全教育や技能教育は十分に行われているか
  • 元請や発注者から求められる管理水準に対応できているか

といった点は、在留資格にかかわらず、会社側の責任として問われます。

Warning

例えば、外国人が現場で労災事故を起こすと「なんで外国人なのにあんな危険な作業やらせたんだ!」と労基署や元請・発注者は責任追及してくるでしょう。その時に「いや、彼は外国人ですが当社の基準、判断基準では問題ない技能レベルの社員です。ですので事故の原因は彼が外国人だからではなく別にあるはずです。その要因についてはしっかりと調べて再発防止に努めます」と自信をもって反論できるような管理体制の整備が必要ということです。

特に定住者・永住者は「自由度が高い」分、業務内容や配置判断が現場任せ・担当者任せになりやすく、判断の根拠やルールが社内に残らないまま起用されがちです。

就労制限がない在留資格だからこそ、実は会社としての判断基準や管理体制を整えておかないと問題になりかねないという点は、建設業において見落とされがちなポイントと言えるでしょう。


在留資格が違っても「会社に求められる管理」は共通している

ここまで在留資格ごとの特徴を見てきましたが、実務上、非常に重要なポイントがあります。

それは、

在留資格が違っても、会社に求められる管理の本質はほぼ共通している

という点です。例えば、

  • どの業務に従事させるのか
  • 誰が配置や業務内容を判断するのか
  • 現場・事務・管理者の役割分担はどうなっているか
  • 関連書類や証跡は適切に管理されているか

これらは、在留資格の種類にかかわらず、会社として必ず整理しておく必要がある事項です。


外国人労働者の問題はなぜ属人化しやすいのか

建設業における外国人労働者に関する問題は、非常に属人化しやすい傾向があります。

  • 特定の事務担当者しか分かっていない
  • 現場判断が先行してしまう
  • 「前からこうしているから大丈夫」という思い込み

こうした状態が続くと、担当者が変わったとき、問題が表に出たときに、会社として説明ができないという事態に陥ります。


在留資格の選択と同様に重要な「会社としての体制整備」

「誰を雇えるか」より「管理できるか」

外国人雇用を検討する際、「どの在留資格なら雇えるか」が先に来がちですが、本当に重要なのは、

自社がどれだけしっかり管理できるか

という視点です。会社の規模、管理体制、現場の状況に合わない制度を選ぶと、短期的には人手不足が解消されたように見えても、中長期的には大きなリスクを抱えることになります。

属人化を防ぐために最低限必要な体制とは

最低限必要なのは、

  • 判断基準を明文化する
  • 社内で共有できる形にする
  • 定期的に見直す

といった、「人に依存しない仕組み」です。これは決して大げさな規程整備を意味するものではなく、日常業務で迷いやすいポイントを整理し、社内で共通認識を持つことから始めるだけでも大きく変わります。


まとめ|建設業で外国人を活用するなら在留資格は「体制整備」の入口

在留資格は、外国人を雇用するための目的ではなく、会社として技能者についてどのような人事面での管理体制を構築するかを考える入口です。また、建設業という業界特性を踏まえずに進めてしまうと、後から修正がきかない問題に発展するケースも少なくありません。

在留資格の違いを正しく理解しつつ、それと同時並行して会社としての体制をどう整えるかを考えることが、外国人労働者を無理なく、長く活用していくための第一歩になります。

次の記事からは、以下のテーマを順に詳しく解説していきます

  • 育成就労とは何か?建設業での特徴と注意点
  • 特定技能(建設分野)の受入れ実務と落とし穴
  • 定住者を建設業で雇用する際の実務ポイント
  • 在留資格別に見る管理体制の違いと共通点
育成就労とは何か?押さえておくべき制度のポイントと注意点

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具体的な対応については、専門家にご相談のうえ、貴社の実情に即した判断を行っていただくことをおすすめします。