建設業界では慢性的な人手不足が続き、採用難や働き方改革への対応が急務となっています。特に、営業所技術者(旧:専任技術者いわゆる「専技」)や配置技術者(主任技術者/監理技術者)は資格要件が厳しいため、採用できずに許可更新や工事受注で悩む企業も少なくありません。

また、近年では中途採用、新卒採用共にテレワークができない会社は最初から選択肢に入らないという現象も起きています。→検索結果に自社が表示されない(検討の対象、選択肢にもならない)ということです。

こうした現状を受け、国土交通省は近年、テレワークの活用について一定の緩和を進めています。本記事では、営業所技術者のテレワークが認められる要件と、配置技術者(主任技術者/監理技術者)のテレワークに関する最新動向をまとめ、建設業者様が人材確保と働き方改革を両立させるポイントを解説します。

はじめに -営業所技術者と配置技術者の違いを再度確認-

(1)営業所技術者と配置技術者の役割の違いとテレワーク制度の前提

建設業法において「営業所技術者(旧:専任技術者)」と「配置技術者(主任技術者・監理技術者)」は、そもそも目的・役割・求められる常駐性がまったく異なる制度として位置づけられています。この違いがあるため、テレワークに関する考え方、取り扱いが異なっています。

■ 営業所技術者:営業所における“契約・技術管理”を担う存在

営業所技術者は、建設業者が行う請負契約の締結・履行に関する技術的管理を行うために営業所に置かれる技術者です。、営業所ごとに技術者を専任配置することで「適正な施工の確保(発注者保護)を図る」ための制度であると明確に示しています。

つまり営業所技術者は、

  • 営業所での契約内容の確認
  • 技術面の審査
  • 発注者対応

など、営業所の技術水準を担保する役割を持ちます。これらの業務は、ICTを活用することで営業所と同様の状況を再現しやすいため、国交省も「ICT活用で同等業務が可能ならテレワーク可」とガイドラインで示しています。


■ 配置技術者(主任技術者・監理技術者):工事現場における“施工管理の責任者”

一方、配置技術者は工事現場に配置される技術者であり、主任技術者または監理技術者として工事の品質確保に直接責任を持ちます。

監理技術者については、請負金額4,500万円以上(建築一式は9,000万円以上)の工事ではさらに専任配置が必要とされ、工事の安全・品質確保のため現場に常駐することが前提とされています。

このように、配置技術者は現場で実物を確認し、施工体制・品質・安全を管理する責任を持つため、営業所技術者よりテレワークの範囲が限定的になります。


■ テレワーク制度の違いが生まれる理由

上記のとおり、

  • 営業所技術者:営業所での技術管理 → ICTで代替しやすい → テレワーク幅は広い
  • 配置技術者:現場での施工管理 → ICTでは代替が難しい → テレワークは限定的

という構造があり、テレワークの制度化に差が生まれています。

2024年の制度改正により、監理技術者でも一部の業務(書類作成・打合せ・映像通信を用いた管理など)についてテレワークが認められましたが、依然として“工事現場の責任者”である以上、完全なリモート勤務は想定されていません


1. 営業所技術者(旧:専任技術者)はテレワーク可能か?

結論として、テレワークは可能です。国土交通省は令和3年12月に「建設業許可事務ガイドライン」を改正し、営業所技術者のテレワークについて次のように明確に示しました。

「ICTの活用により、営業所等と同等の職務が遂行でき、所定の時間中に常時連絡が取れる環境」であれば要件を満たす。

■ テレワークが認められるための具体要件

国土交通省のQ&Aによれば、必要なICT環境として以下が示されています。

  • メールを送受信・確認できる
  • 契約書・設計図書などを確認できる
  • 電話が常に繋がる状態である

つまり、実務上はオンラインで営業所と同等の管理、対応ができる環境が整っていれば可ということです。


2. 営業所が無人でもよいのか?

「営業所が無人状態になると許可に不利では?」という質問をよくいただきますが、結論は次のとおりです。

営業所が無人でも可。ただし、発注者が連絡先を把握し、必要時に対面対応できる体制が必須。

つまり、実態として“連絡不能”“対面対応不可”となる運用はNGです。


3. 遠隔地(例:沖縄在住者が北海道の営業所を担当)は可能か?

ここは重要ポイントです。

結論:遠隔地でのテレワークは原則認められません。

理由:

  • 緊急時に対面説明や現場確認を求められる可能性がある
  • 従来の専任要件(常勤性)に変更はなく、常識上通勤不可能な距離は専任と認められない

つまり、営業所技術者はテレワーク可能とはいえ、通勤可能圏内に居住していることが前提です。「通勤可能かどうか」の点については、その実態について通勤定期券の購入履歴、定期券でなければ交通系ICカード(suica、pasmo、toica、manaca等)の入出場記録や高速道路利用時のETCの通過日時のデータの提出等により調査されることがあります。


4. 配置技術者(主任技術者・監理技術者)はテレワーク可能か?

この点は営業所技術者とは状況が異なり、従来は「現場専任・常駐」が原則でした。しかし、2024年4月に国土交通省が監理技術者制度運用マニュアルを改正し、一部テレワークや不在を認める方向に大きく舵を切りました。

■ 改正で認められるようになったこと(監理技術者)

  • 書類作成のためのテレワーク
  • 映像・音声ツールを使った体制確認
  • 短期間の不在は発注者の了解不要
  • バックオフィス支援の外注化

ただし、全面的なテレワークが認められるわけではなく、次の前提条件があります。

 テレワークが可能となる条件(監理技術者)
  • 現場をオンラインで把握できる体制
  • 必要に応じて現場へ戻れる体制
  • 必要な代理技術者の配置

つまり、現場管理の一部業務が一定の要件のリモートで可能になったという位置づけです。※詳細については「監理技術者制度マニュアル」をご確認いただくか、管轄行政庁または当事務所へご確認ください。


5. 技術者のテレワーク活用で注意すべきポイント

建設業者がテレワークを導入する際に押さえておくべきポイントは次の3点です。

(1) 実態として「専任」や「常駐」を満たすこと

書面だけ整えても、実態や管理体制が伴わなければ許可や更新時に問題となります。

(2) 通勤可能範囲に居住していること(営業所技術者)

遠隔地テレワークは不可。 ※「常識上通勤不可能」と判断される距離はNG。実態の証明を求められることも。

(3) 発注者対応の体制を必ず整えること

営業所無人時は、連絡先提示や対面対応の準備が必要です。


まとめ:テレワークは条件付きだが人手不足対策として考慮すべき選択肢

営業所技術者については、

  • 適切なICT環境
  • 常時連絡可能な体制
  • 通勤可能圏内での勤務

という要件を満たせば、テレワークが認められます。一方、配置技術者(主任技術者/監理技術者)は、

  • テレワークでできる業務の範囲が拡大した
  • ただし、現場管理の核心部分は引き続き現場中心

という形で、段階的に柔軟化が進んでいます。人手不足が深刻化する中、テレワークは建設業者の技術者確保の大きな武器となります。

タイミングと事業者様の状況にもよりますが、テレワークの導入には補助金、助成金の活用も可能な場合もあります。御社の実情に応じて、テレワークを活用した許可維持・働き方改革の最適な対応方法を一緒に考えましょう。初回相談は無料ですのでお気軽にご連絡ください。

【ご注意】当ホームページの内容は、建設業法その他関係法令等に関する一般的な情報を提供するものであり、個別具体的な案件に対する法的判断を示すものではありません。実際の許可要否や手続きについては、管轄行政庁に確認するか、当事務所までお問い合わせください。

投稿者プロフィール

古井 竜文(たつのり)
古井 竜文(たつのり)(株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。