
はじめに:「税務署に出した決算書」そのままでは受理されません!
「税理士さんが作ってくれた決算書があるから、それをコピーして出せばいいんでしょ?」
愛知県で建設業許可をお持ちの社長様、あるいは事務担当者様。もしそう思われているとしたら、それは大きな間違いです。
毎年提出する「事業年度終了届(決算変更届)」における財務諸表(様式第15号・16号など)は、建設業法独自の勘定科目にすべて書き換えなければなりません。
- 「売掛金」はダメ。「完成工事未収入金」にする。
- 「仕掛品」はダメ。「未成工事支出金」にする。
- 「兼業事業(不動産や建材販売など)」がある場合は、売上も原価も分けなければならない。
この作業は、単なる言葉の置き換えではありません。会社の「財務健全性」を正しく評価するための重要なプロセスです。日商簿記検定1級・建設業経理士2級の資格を持つ行政書士が愛知県の審査基準をクリアするための「科目変換(読み替え)」のポイントを徹底解説します。
1. なぜ「書き換え」が必要なのか?
税務申告用の決算書は「税金を正しく計算するため」のものですが、建設業許可の財務諸表は「その会社が建設工事を請け負うだけの財産的基礎・信用があるか」を見るためのものです。
そのため、「工事に関わるお金」と「それ以外のお金」を明確に区別することが求められます。
特に、将来的に公共工事に参入するために経審(経営事項審査)を受ける場合、この財務諸表の数値がそのまま点数(Y点・X2点)に直結するため、1円のズレも許されません。
2. 貸借対照表(B/S)の変換ポイント
まずは貸借対照表(資産・負債・純資産)の代表的な変換例を見ていきましょう。
お手元の決算書(税務申告用)を見ながら確認してください。
① 流動資産の変換
最も間違えやすいのがここです。
| 税務申告書の科目 | 建設業様式(様式第15号)への変換 | 注意点 |
| 売掛金 | 完成工事未収入金 | 工事代金の未回収分はこれ。兼業(物品販売など)の売掛金は「売掛金」のままでOK。 |
| 受取手形 | 受取手形 | 工事代金の手形のみ。 |
| 仕掛品・在庫 | 未成工事支出金 | まだ完成していない工事にかかった費用。 |
| 原材料・貯蔵品 | 材料貯蔵品 | 未使用の資材など。 |
| 前渡金 | 立替金 など | 工事に関係ないものは流動資産の「その他」等へ。 |
② 流動負債の変換
お金を払う側の科目も、建設業独特の言葉になります。
| 税務申告書の科目 | 建設業様式(様式第15号)への変換 | 注意点 |
| 買掛金 | 工事未払金 | 材料屋さんや外注先への未払分はこれ。 |
| 前受金 | 未成工事受入金 | 工事着手前にお客様から頂いた着手金など。 |
3. 損益計算書(P/L)の変換ポイント
次は損益計算書です。ここでは「建設業」と「それ以外(兼業)」を分ける作業がメインになります。
① 売上高の分離
- 完成工事高: 建設工事の請負による売上。
- 兼業事業売上高: 不動産販売、資材販売、除雪業務(委託契約の場合)などの売上。
※重要:
ここで計上する「完成工事高」は、別途作成する「工事経歴書(様式第2号)」の合計額と1円単位(実際に記載するのは千円単位)で完全に一致していなければなりません。
② 原価の分解(完成工事原価報告書)
税務申告書では「当期製造原価」としてまとまっているものを、建設業様式では以下の4つに分類して記載する必要があります。
- 材料費: 工事のために仕入れた材料代。
- 労務費: 自社の現場作業員に支払った賃金(※事務員や役員報酬は入りません)。
- 外注費: 下請業者に支払った工事代金。
- 経費: 現場の水道光熱費、現場消耗品、機械のリース代、法定福利費など。
4. 愛知県様式の「単位」ルール
愛知県の手引きでは、原則として「千円単位(千円未満切り捨て)」での記載が求められます。(※自社の過去の提出書類と整合性を取ってください)
しかし、元々の決算書は「1円単位」で作られていますよね。
これを千円単位に直していくと、必ずどこかで「端数のズレ」が生じます。
- 資産合計と負債・純資産合計が合わない。
- 利益の額が数千円ズレる。
この場合、適当な科目(「その他」など)で端数調整を行い、貸借が必ず一致するように調整しなければなりません。これが地味ですが非常に時間のかかるパズル作業です。
5. 自分でやるのは「経営リスク」かもしれません
ここまで読んで、「なんだか面倒くさそうだな…」と思われたかもしれません。
はい、実際かなり面倒です。
従業員10名~30名規模の建設会社様の場合、兼業があったり、原価の項目が多岐にわたったりするため、この仕分け作業だけで半日~1日潰れてしまうこともザラにあります。
さらに怖いのは、「間違った変換」によるデメリットです。
経審の点数が下がるリスク
もし、本当は「流動資産(現預金など)」に入れられるものを、間違って「固定資産」や「繰延資産」に計上してしまったらどうなるでしょう?
会社の支払い能力を示す「流動比率」が悪化し、経審の点数(Y点)が下がってしまう可能性があります。
「たかが書類作成」と事務員さんに任せきりにしていると、知らず知らずのうちに自社の評価を下げているかもしれないのです。
また、今は公共事業に参入していないため「経審はうちには関係ない」という会社でも、将来的に公共事業に参入しようと思った際にそれまでに作成している建設業財務諸表(決算書)が誤った基準・科目変換で作られているとそれまでに提出された書類との整合性の説明や過去履歴の確認等が必要となり膨大な工数がかかることもあります。
経審を見据えた科目変換サポートのご案内
今は公共工事に興味が無く経審を受けていなくても、公共工事への参入の可能性はゼロでしょうか?その時に困らない整理ができていますか?
事業年度終了届に添付する財務諸表(決算書)は、 毎年、税務申告のために税理士さんが作成した決算書をベースに作成されるため、「提出できているから問題ない」 と考えられがちです。しかし、公共工事参入のために経営事項審査(経審)を受ける場合、
- その年だけでなく
- 過去数年分の財務内容を前提に
評価・確認が行われます。そのときに問題になるのが、
- なぜその科目区分にしたのか
- 税務処理と建設業の整理の違い
- 年度ごとに考え方がブレていないか
といった、過去の科目変換の考え方です。本サービスは、 将来、経審を受ける可能性を見据えて
「今の処理が、そのまま積み上がっても説明できるか」
という視点で、 財務諸表の科目変換に関する整理をサポートするサービスです。
このサービスで行うこと
1. 財務諸表(科目変換)の内容確認
現在提出している財務諸表について、
- 建設業向けの科目区分として違和感がないか
- 経審で見られた場合に説明が必要になりそうな点はないか
- 年度をまたいで考え方がブレていないか
を、実務目線で確認します。
※ 決算書の作成代行や税務判断は行いません
2. 判断ポイントの整理・言語化
確認結果をもとに、
- なぜその科目区分にしているのか
- 経審で論点になりやすいポイント
- 将来ブレやすい処理の注意点
を整理し、 社内で共有できる形でまとめます。これにより、
- 担当者が変わっても説明できる
- 過去の処理を遡って確認できる
- 経審を受けるかどうか検討する際の材料になる
という状態を作ります。「属人化を防ぐ」という意味でISO、事業継続計画(BCP)、内部監査、内部統制等の観点からも有効です。
3. 将来に向けた考え方の整理(経営判断用)
本サービスは、
- 今すぐ経審を受けるための準備
ではなく、
- 将来、受けることになっても困らない状態
を作るための整理が目的です。
- 今後もこの処理で問題ないか
- 経審を受ける場合、どこを直す必要があるか
- 修正が難しいポイントはどこか
といった、 経営判断の材料を整理します。
このサービスが向いている会社
- 今は経審を受けていないが、将来の可能性を完全には否定していない
- 民間工事が中心だが、公共工事も視野に入る可能性がある
- 財務諸表は毎年同じように作っている
- 科目区分の考え方を誰も説明できない
- 事務担当者が毎年不安を感じている
※ 経審を一切受ける予定がない会社には、おすすめのサービスではありません
成果物(「科目変換マニュアル」)のイメージ
- 財務諸表(科目変換)の確認コメント
- 判断ポイント整理メモ(A4・2〜3枚程度)
- 科目区分の考え方
- 注意点・よくあるブレ
- 将来修正が難しいポイント
👉 過去に戻れない部分を、今(作成)の時点で整理して将来振り返ることができるように残すための資料です。
よくあるご質問
-
今のところは公共工事に興味が無いので経審を受けない予定ですが、意味はありますか?
-
はい。「受ける可能性がゼロかどうか分からない」という事業者様にこそ、一番意味があるサービスです。
-
税理士との役割分担はどうなりますか?
-
税務判断や申告内容には踏み込みません(踏み込めません)。 税理士さんでは気づくことができない建設業許可・経審の観点から、 「どう見られるか」「どう説明するか」を整理します。
料金の考え方
本サービスは、
- 書類作成代行ではなく
- 財務処理の判断整理・見える化
を行うものです。許可業種の数、工事内容・年度数により異なりますが、 3~5万円台でのご相談が中心です。
お問い合わせ(営業目的の連絡は行いません)
今すぐ経審を受けるためではなく、
- 将来の選択肢を残すため
- 「なぜこの処理にしているのか」を説明できるようにするため
の整理を行うサービスです。初回の無料web相談も行っておりますのでお気軽にお問合せください。
※ 無理な営業は行っていません ※ 状況整理が目的のご相談です
本サービスは、サービス提供時点の法令解釈・実務運用を前提に整理を行うものです。 将来の制度変更等により、考え方が変わる可能性がある点をご理解ください。



