
「そしたら、注文書はPDFで送りますのでよろしくおねがいします。」
身近で、かつ簡単な電子化、デジタル化の手段としてPDF添付による注文書の電子メールによる送付は、特にコロナ禍以降に一般化しました。しかしながら建設業を営む事業者様にとっては実は気を付けるべき方法なのです。
本記事ではどうすれば適法な運用となるのかを、工作機械商社の管理部門出身の行政書士がポイントを押さえて解説します。
1. 建設工事の請負契約と印紙税の基本
建設業の契約は“請負契約”で進みます。この請負契約書(注文書・請書を含む契約成立を証する文書)は、印紙税法上の課税文書に該当し、原則として印紙の貼付が必要です。
もっとも、建設工事の請負契約書については、租税特別措置法により軽減措置が用意され、平成26年4月1日から令和9年(2027年)3月31日までに作成されるものは税率が引き下げられています(記載金額100万円超が対象)。
いくら節約できる?──3つの金額帯で“実務的”試算
ここでは、「紙の契約」前提(印紙+郵送2往復相当)」と「適法な電子契約(印紙0/郵送0)」の差額イメージを、最近値上げされた郵便料金も踏まえて示します。郵便料金の試算は、2024年10月1日から定形25g・50gが一律110円、レターパックはライト430円・プラス600円へ改定済みです。 ※実務上は「契約書2部を相互にやり取り」や「送付した注文書(または注文請書)を返送依頼」する場面が多く、片道×2回(往復)で見積もると管理がしやすいです。以下はレターパックライト(430円)を2回=860円で試算したものです。
ケース1:請負金額 600万円
- 紙:印紙税(軽減後)5,000円+郵送860円=5,860円/件の負担。
- 電子契約:印紙0円、郵送0円(サービス手数料等は別途)。→約5,860円/件の削減。
ケース2:請負金額 4,000万円
- 紙:印紙税(軽減後)10,000円+郵送860円円=10,860円/件。
- 電子契約:印紙0円、郵送0円。→約10,860円/件の削減。
「電子なら印紙不要」は本当か?──国税庁の見解
国税庁は、電磁的記録は印紙税の課税対象である「文書」に含まれないと明確に示しています。たとえば、電子署名を付した電磁的記録をメール送信した請負の取引情報について、印紙税は課税されないとの質疑応答事例が公表されています。
このため、適法な電子契約(電磁的記録)であれば、印紙税は不要という整理で差し支えありません。
ただし注意!「Word/Excel→PDF化してメール送信」は“要件を満たさない”ことがある
「注文書・注文請書をWord/Excelで作ってPDF化し、押印済み原本を印刷して送り、控えPDFをメール添付」
よくある運用かもしれませんが、これだけでは不十分です。建設業では、建設業法19条の“書面の交付”に代わる電磁的措置を使う場合、国土交通省のガイドラインに適合する必要があります。
ガイドラインは、電子契約に必要な技術的基準として「見読性」「原本性」「本人性」を要求しています。単にPDFを送り合うだけでは、改ざん防止や本人確認の実装が不十分となり得ます。
2. 何を満たせばよい?──国交省ガイドラインの要点
国交省「電磁的措置による建設工事の請負契約の締結に係るガイドライン」では、以下が整理されています。
- 電磁的措置の事前承諾:相手方に方式・サービス名・記録形式(例:PDF)・タイムスタンプ等を示し、事前承諾を得る。
- 見読性:誰でも所定のソフト(例:Acrobat Reader)で読めること、記録の迅速な取り出しや検索性も望ましい。
- 原本性:電子署名やタイムスタンプ等で改ざん検知ができること。
- 本人性:特定認証業務の電子証明書等により当事者本人確認を担保すること。
さらに、電子署名の方式は次の3つに整理され、実務的には「事業者署名型(立会人型)」が現実的な運用可能な手段として明確化されています。
- 当事者署名型(ローカル署名)
- 当事者署名型(リモート署名)
- 事業者署名型(立会人型):第三者サービスの署名鍵等を用い、ユーザー意思に基づく暗号化や二要素認証が望ましい等の要件整理が進みました。
事業者署名型(立会人型)の詳細についてはこちらの記事にまとめています。
まとめ:印紙税も郵送費も“ゼロ”へ。適法な電子契約へ一気通貫で移行を
- 印紙税:建設工事の請負契約書は軽減措置があるとはいえ、金額が大きいほど負担が無視できません(~2027/3/31まで軽減)。
- 電子契約:国税庁見解により電磁的記録は非課税。印紙は不要。
- 郵送費:2024/10/1改定で定形110円/レターパックライト430円に上がっており、往復やり取りのたびに積み上がる。電子なら郵送0。
- 適法性:国交省ガイドラインの見読性・原本性・本人性を満たし、立会人型等の要件を押さえた電子契約サービスで運用する。
「PDFをメールで送るだけ」ではなく、ガイドライン準拠の電子契約へ。印紙代・郵送費・手戻りを同時に削減しつつ、証拠力と監査対応を担保できます。
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【免責事項】本記事は、2026年2月時点での法令等の公開情報に基づく一般的な解説です。個別案件の適用は事実関係により異なり得ます。内容の正確性・完全性を保証するものではありません。実務適用にあたっては、所轄税務署・監督行政庁・士業等の専門家へご確認ください。
投稿者プロフィール

- (株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
- 自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。









