建設業で外国人を採用・配置するとき、在留資格の「更新」ではなく「変更」が必要になる場面があります。たとえば、留学→特定技能、技能実習→特定技能、留学→技人国(施工管理・設計・国際業務)などです。手続を正しく進めないと就労不可・不許可・稼働停止につながるため、会社側の準備・本人の書類・スケジュール設計を体系的に理解しておくことが重要です。
在留資格「変更」と「更新」の違い
- 更新(在留期間更新):在留資格の種類はそのまま、期間だけ延長する手続。
- 変更(在留資格変更):活動の内容・目的が変わるため、在留資格の種類自体を切り替える手続。
- 例:留学で在学中の人を、新卒で技人国(施工管理・設計・国際業務)として採用する
- 例:技能実習を修了した人を、現場の即戦力である特定技能として雇用する
ポイント:就労可否は「在留資格」次第。職務内容が在留資格の範囲外だと、契約しても稼働できません。
変更が必要になる代表パターン(建設業)
- 留学 → 特定技能(建設分野):技能試験+日本語試験に合格し、現場作業の即戦力として就労
- 技能実習 → 特定技能:実習修了後に技能試験合格を前提として同分野で継続就労
- 留学 → 技人国:施工管理・設計・積算・国際業務等の専門・管理系ポジション
- 特定技能 → 技人国:現場中心から、管理・設計支援・国際業務へ職務転換するケース
手続の全体フロー(会社・本人の役割)
- 職務設計(会社)
- 在留資格の要件に合致する職務記述書(JD:Job Discrption)を作成
- 現場作業中心なら特定技能、専門・管理なら技人国を検討
- 内定・雇用契約(双方)
- 労働条件通知書で、職務・賃金・就業場所・社保加入を明確化
- 必要書類の収集(会社・本人)
- 会社:登記事項証明書、決算書、組織図、就業規則 等
- 本人:卒業証明・職務経歴・試験合格証明・在留カード 等
- 在留資格変更許可申請(本人 or 取次者)
- 申請書、理由書、職務内容説明書、雇用契約書、各種添付書類
- 審査(入管)
- 業務と要件の適合性、会社の受入体制、報酬の同等性、書類の真正性を確認
- 許可・在留カード更新(本人)
- 許可後に収入印紙(窓口:6,000円/オンライン:5,500円)を納付、在留カードが新資格に
- 就労開始・届出(会社)
- 外国人雇用状況の届出(ハローワーク)、社保・雇保加入手続、勤怠・安全教育開始
目安期間:書類準備2~4週間、審査1~2か月(時期・案件により変動)。更新より変更の方が審査は重い傾向。
会社側が事前に整えるべきもの
- 建設業許可・入札資格等、事業の適正性を示す基礎資料
- 就業規則・賃金規程・安全衛生体制(社保加入の前提)
- 部署・上司・教育計画(受入体制の具体性)
- 職務記述書(JD):在留資格の定義に合致するよう、専門性・判断業務を明記
- 評価指標(KPI):工程・品質・安全・原価(施工管理)、設計品質・BIM進捗、国際調達の成果 等
在留資格別・職務の考え方(建設業)
特定技能(建設)
- 現場の作業人材(土木・建築・配管・とび 等)
- 要件:建設分野の技能試験合格+日本語試験(原則、日本語検定試験N4以上)
- 会社の義務:生活支援・相談窓口・定期面談などの支援計画(登録支援機関の活用が一般的)
技人国(技術・人文知識・国際業務)
- 専門・管理・設計・国際業務系(施工管理、設計・積算、国際調達、通訳翻訳 など)
- 要件:学士相当の学歴(関連分野)または長年の実務経験+同等報酬
- 会社の要点:職務の専門性と意思決定関与を説明(現場の単純作業は対象外)
必要書類一覧(汎用・建設業向け)
本人が用意するもの
- 在留資格変更許可申請書(様式)
- 理由書(自己申述):進路・職務・将来計画、学業・経験との関連性
- 履歴書・職務経歴書:具体的な工事・役割・成果を記載
- 卒業証明書/成績証明書(該当者)
- 技能試験合格証明/日本語試験合格証明(特定技能)
- 在留カード・パスポート・顔写真
- 前職在籍証明・推薦状(あれば望ましい)
会社が用意するもの
- 会社概要書(沿革・事業内容・組織図・主要取引先)
- 登記事項証明書・直近の決算書
- 雇用契約書・労働条件通知書(職務・就業場所・賃金・社保)
- 職務内容説明書(在留資格に適合する専門性・判断業務を明記)
- 就業規則・賃金規程・安全衛生体制の説明資料
- 受入れ・教育計画(担当者、研修内容、評価方法)
- 支援計画書(特定技能)+登録支援機関との委託契約書(委託する場合)
すべて真正性・一貫性が重視されます。和訳の品質や社内様式の統一も不許可回避の鍵。
スケジュール例(90日運用プラン)
- Day 1–14:職務設計/JD作成、会社・本人の書類洗い出し
- Day 15–30:書類収集・和訳、理由書・職務説明書の草稿作成
- Day 31–45:社内体制(教育・安全・評価)文書化、誤記修正・押印
- Day 46–50:申請(窓口 or オンライン)
- Day 51–90:審査待ち→追加提出対応→許可→在留カード切替→就労開始
- 併行して社保・雇保手続/勤怠・安全教育/生活オリエンテーションを実施
よくある不許可原因と回避策
- 職務が在留資格に合致していない
- 回避策:現場作業中心なら特定技能へ、管理・設計なら技人国へ。職務の専門性・判断要件を文書で明確化。
- 学歴・経験の関連性説明が弱い
- 回避策:学業・過去業務と現在職務の関連マップを作成(図解・事例で補強)。
- 報酬が日本人同等に満たない
- 回避策:等級・職責に応じた賃金表を添付し、同等性を客観的に証明。
- 書類の不統一・誤記・和訳不備
- 回避策:様式統一、ダブルチェック、訳者情報記載。差異がある場合は説明書を添付。
申請費用・処理期間の目安
- 許可時の手数料:窓口:6,000円/オンライン:5,500円(一般的な在留資格変更許可)
- 処理期間:概ね1~2か月(繁忙期・案件難易度で変動)
- 注意:金額・期間は制度改正・地域事情で変わるため、最新情報の確認が必須
電子申請(オンライン)活用のコツ
- 在留申請オンラインシステムを利用すると、提出・補正がスムーズ
- ID発行・権限管理を社内規程に落とし込み、申請フローを標準化
- 添付ファイルの命名・版管理を統一し、差し替え履歴を残す
受入後の必須実務(会社)
- 外国人雇用状況の届出(ハローワーク)
- 社会保険・雇用保険の資格取得届
- 在留カードのコピー保管・更新期限管理
- 生活オリエンテーション/安全教育/ハラスメント防止研修
- 勤怠・労働時間管理(時間外上限・割増賃金)
- 特定技能の場合の支援計画の実施・記録
チェックリスト(提出前最終確認)
- 職務記述書は在留資格の定義に合致しているか
- 学歴・経験の関連性が理由書でロジカルに説明されているか
- 雇用契約書・労働条件通知書の記載に矛盾がないか
- 報酬の同等性を賃金表等で客観的に示しているか
- 会社概要・決算書・就業規則・安全体制資料は最新か
- 特定技能の支援計画(支援項目・頻度)が具体的か
- 書類の体裁・和訳品質・押印・日付が揃っているか
- 更新期限・届出スケジュールの社内カレンダー化
まとめ
在留資格の「変更」は、単なる書類差し替えではなく、職務設計・体制整備・エビデンス整備まで含めたプロジェクトです。建設業での受け入れは、特定技能(現場の即戦力)と技人国(専門・管理)の棲み分けを理解し、会社の受入体制を文書で示すことが許可の成否を分けます。最短で安全に就労開始するために、準備→申請→受入後運用までを一気通貫で整えていきましょう。当事務所は初回相談無料ですのでお気軽にご相談ください。
【ご注意】当ホームページの内容は、在留資格等に関する一般的な情報を提供するものであり、個別具体的な案件に対する法的判断を示すものではありません。実際の許可要否や手続きについては、出入国在留管理庁に確認するか、当事務所までお問い合わせください。



