知らないだけで、取りこぼしている利益があります

1. 法律は「守るもの」だけだと思っていませんか?
建設業法や下請法、取引適正化に関する法律と聞くと、「違反すると罰せられる」「トラブルになった時に使うもの」そんなイメージを持たれている方が多いかもしれません。
確かに、法律には規制の側面があります。しかし実務の現場で見ていると、実はそれ以上に重要なのが、
「知っているか、知らないかで、立場が変わる」
という点です。特に設備系建設業や機械器具設置工事業では、日常的な取引の中に「グレーだけど慣習化している不利な条件」が当たり前のように入り込んでいます。
それらは、声を荒らげて争わなくても、法律の考え方を踏まえて整理するだけで改善できる余地があるものも少なくありません。
2. 不当な「指値」は、どこからが問題になるのか
「今回はこの金額でお願いできないか」いわゆる“指値”は、建設業界では珍しいものではありません。重要なのは、指値そのものが直ちに違法になるわけではないという点です。問題になるのは、その背景です。
例えば、
- 「前回と同額で」と明らかに原価を割り込む金額を一方的に指定する
- 労務費や法定福利費の上昇を一切考慮しない
- 断る余地がない関係性の中で、継続的に押し付ける
こうしたケースでは、建設業法や取適法の観点から「不適切な取引」と評価される余地が出てきます。ここで大切なのは、正義を振りかざし「違法だ」と詰め寄ることではありません。
「この条件が続くと、法の趣旨から見て無理がある」と説明できる材料を持っているかどうか。それだけで、交渉の空気は大きく変わります。
3. やり直し工事・無償対応は本当に「当然」か
現場では、こんなケースがよくあります。
- 仕様が変わったが、工期がないので無償対応
- 指示が曖昧だったが、結局こちらでやり直し
- 元請側の都合による変更を、下請が吸収
長年の付き合いの中で、「仕方ない」「揉めたくない」とやむなく対応してきた会社も多いでしょう。しかし法律の考え方では、
- 追加指示なのか
- 契約外業務なのか
- 誰の責任による変更なのか
これらを書面や記録で整えていないこと自体が、リスクになります。無償対応が常態化すると、価格交渉以前に「不利な前提」が固定化されてしまうのです。
4. 支払遅延・条件変更は「言える余地」がある分野
法律の効力が比較的分かりやすく表れるのが、支払いに関する問題です。
- 支払期日が不明確
- 検収を理由に支払いが遅れる
- 後出しで条件が変わる
こうしたケースは、「こういう業界の慣習でずっとそうだったから仕方ない」で済まされがちですが、実務的には問題を含んでいることも少なくありません。ここでも重要なのは、感情的に訴えることではなく、
- 契約内容
- 建設業法上の考え方
- 取引適正の観点
を踏まえて、冷静に整理して伝えることです。実際には、「そういう法的懸念があるようでしたら、一度社内で検討します」と歩み寄りが得られるケースも多くあります。
5. 法律を知っているだけで、交渉の立ち位置が変わる
ここまで読んでいただくと分かるように、
法律は、
- 相手を責めるためのもの
ではなく、 - 自社が一方的に損をしないための“下支え”
として使うものです。契約、見積、指示、支払い。これらを法的な視点で一度整理しておくだけで、
- 無理な要求が減る
- 交渉の前提が整う
- 社内でも判断しやすくなる
という効果があります。
6. 次回予告:値上げ以外にも、利益を守る方法はある
価格転嫁は重要です。しかし、それが唯一の選択肢ではありません。
次回は、
- 補助金・助成金を活用した実質的なコストダウン
- IT化や制度対応を「負担」にしない考え方
について解説します。「(相手の状況次第の)値上げが難しい状況でも、(自社で)打てる手はある」そんな視点をお伝えいたします。
発想の転換、補助金・助成金を活用した「実質的なコストダウン」戦略
値上げが難しい時こそ、制度を使って利益を守る 1. 価格転嫁だけに頼る経営は、実はリスクが高い ここまでの回で、価格転嫁の重要性について繰り返しお伝えしてきました。しかし実務の現場では、 といった理由から、「理屈は分かる […]
投稿者プロフィール

- (株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
- 自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。









