【ご注意】こちらのページは愛知県に主たる営業所がある事業者様向けの記事になっています。愛知県以外の都道府県の事業者様の場合は、こちらの記事をご参考ください。

「事業年度終了届、作って出しといて」と頼まれたご担当者様へ

愛知県で建設業許可をお持ちの事業者様にとって、毎年の「事業年度終了届」は必須の義務。行政書士への代行費用を節約するため、自社で作成するように指示を受け奮闘されているご担当者様も多いのではないでしょうか。しかし、愛知県のホームページから手引きをダウンロードして開いてみると……

  • 「工事経歴書って、結局どの工事を何件ピックアップすればいいの?」
  • 「建設業独自の勘定科目って何? 税理士さんの決算書と合わない…」
  • 「もし不備があって、窓口で突き返されたらどうしよう…」
  • 「建設業用決算書の作成って、税理士さんからの決算書がまだできてこないんだけど…」

と、不安で手が止まり気づけば時間だけが過ぎてしまうという方も非常に多くいらっしゃいます。また、決算日から4ヶ月以内という届出の期限も意識しなければいけません。

愛知県の建設事務所は書類のチェックが厳しめなため、書き方のコツを知らないと何度も修正や再提出を求められることになり、その度に時間や工数を割かなければいけない状況になることも。

かといって、提出先の建設事務所へ問い合せしようとしても愛知県の建設事務所の窓口担当者は、常に複数の申請や届出を処理しており多忙を極めています。また、そもそも建設事務所は基本的に「審査する場所」であり「書き方を教える塾」ではないため、「手引きを読んでも分からないので、1から教えてください」と言っても、窓口の担当者は「まずは手引きの該当ページとQ&Aを読んで、作成してみてください」といわれてしまうケースがほとんどで、電話で決算書の組み替え方を延々と教えてくれるような親切なサービスを期待してはいけません。しかしながら、「手引き」はあらゆるケースを想定しており、情報盛りだくさんでさらに混乱。

そうなると「誰に聞けばいいのかわからない」状況のまま、どんどん提出期限のプレッシャーがかかってきます。

でも、ご安心ください。 この記事では、工作機械商社(建設業許可保有)の管理部門出身の行政書士が、愛知県のルールに基づいた「絶対に押さえておくべき書き方のポイント」を画像付きで徹底解説します。この記事を順番に読み進めれば、初めての方でも迷わず書類を完成させることができますのでぜひ最後までご覧ください。

🎁 無料ダウンロード特典

よりわかりやすく理解いただくために本ページの内容を印刷可能なA4サイズにまとめた「【愛知県版】行政書士も使ってる!事業年度終了届、作成マニュアル&提出前チェックリスト」のPDFをご用意いたしました。ぜひお手元に用意してメモを取りながら本記事を読んでみてください。

愛知県での「事業年度終了届」自社作成のポイント

愛知県の各建設事務所への提出は、他県と比べても書類の並び順や確認資料のチェックが厳しめと言われています。まずはおさらいですが自社で行う場合の主な流れは以下の通りです。

必要書類の入手と作成

愛知県(都市総務課建設業・不動産業室)のWebサイトから★印のついている書類は最新の様式をダウンロードします。

  • 事業年度終了届表紙(★):取得している建設業許可の内容、会社情報等を記入します。
  • 工事経歴書(★): 工事実績を一件ずつ抽出して業種ごとに指定された件数を記入します。
  • 直近事業年度における工事施工金額(★): 工事業種ごとの売上高を集計します。
  • 決算書: 税理士さんに作成してもらった「税務申告用の決算書」を、「建設業法用の科目」に振り分けて書き直す必要があります。これが建設業会計の知識を要し、時間がかかり、かつ判断がむずかしい作業です。
  • 事業報告書(株式会社のみ): 事業の概況を表や文章で報告します。特に書式は指定されていないため自社でイチから作成します。
STEP
1

納税証明書の取得

管轄の県税事務所へ行き、事業税の納税証明書を取得する必要があります。郵送やネットでの手続きを利用しての取り寄せも可能ですが、結局郵送待ち等の手間が発生するのと県税事務所の窓口なら証明書類の種類や年度を間違えた場合も「建設業で必要な書類ならこちらですよ」と教えてくれたりするので慣れていない場合は結局、窓口で取得した方が早かったりします。

【ご参考】管轄の県税事務所はこちらです(右のVをクリックしてください)

県税事務所名 管轄市区町村 所在地(住所)
名古屋東部県税事務所 名古屋市(千種区・東区・中区・名東区) 〒460-8483
名古屋市中区新栄町2-9
(スカイオアシス栄内)
名古屋北部県税事務所 名古屋市(北区・西区・守山区)、清須市、北名古屋市、西春日井郡(豊山町) 〒451-8555
名古屋市西区城西1-9-2
名古屋西部県税事務所 名古屋市(中村区・中川区・港区) 〒454-8503
名古屋市中川区中郷1-3
名古屋南部県税事務所 名古屋市(昭和区・瑞穂区・熱田区・南区・緑区・天白区)、豊明市、日進市、長久手市、愛知郡(東郷町) 〒456-8558
名古屋市熱田区森後町8-22
東尾張県税事務所 瀬戸市、春日井市、犬山市、江南市、小牧市、尾張旭市、岩倉市、丹羽郡(大口町・扶桑町) 〒486-8515
春日井市鳥居松町3-65
西尾張県税事務所 一宮市、津島市、稲沢市、愛西市、弥富市、あま市、海部郡(大治町・蟹江町・飛島村) 〒491-8506
一宮市新生2-21-12
知多県税事務所 半田市、常滑市、東海市、大府市、知多市、知多郡(阿久比町・東浦町・南知多町・美浜町・武豊町) 〒475-8505
半田市出口町1-36
(知多総合庁舎内)
西三河県税事務所 岡崎市、碧南市、刈谷市、安城市、西尾市、知立市、高浜市、額田郡(幸田町) 〒444-8503
岡崎市明大寺本町1-4
(西三河総合庁舎内)
豊田加茂県税事務所 豊田市、みよし市 〒471-8537
豊田市元城町4-45
(豊田加茂総合庁舎内)
東三河県税事務所 豊橋市、豊川市、蒲郡市、新城市、田原市、北設楽郡(設楽町・東栄町・豊根村) 〒440-8528
豊橋市八町通5-4
(東三河総合庁舎)
STEP
2

正本・副本の2部作成し提出

愛知県作成の手引きの指定のとおり(正本・副本)を用意し、下記の順番でまとめます。

表紙 → 工事経歴書 → 直近年度における工事施工金額 → 決算書 → 納税証明書

書類一式が完成したら、管轄の建設事務所へ持参、または郵送で提出します。不備がある場合は、建設事務所から連絡があります。その場合は建設事務所へ出向いて修正するか、書類を返送してもらい再提出しなければなりません(不備があると交通費と手間、郵送代がかかります)。

【ご参考】管轄の建設事務所はこちらです(右のVをクリックしてください)

主たる営業所の所在地 所管する窓口
名古屋市の区域 都市・交通局都市基盤部都市総務課
建設業・不動産業室 建設業第二グループ

〒460-8501
名古屋市中区三の丸3-1-2
(自治センター2階)
瀬戸市、春日井市、小牧市、尾張旭市、豊明市、日進市、清須市、北名古屋市、長久手市、愛知郡及び西春日井郡の区域 尾張建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒460-0001
名古屋市中区三の丸2-6-1
(三の丸庁舎5階)
一宮市、犬山市、江南市、稲沢市、岩倉市及び丹羽郡の区域 一宮建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒491-0053
一宮市今伊勢町本神戸字立切1-4
津島市、愛西市、弥富市、あま市及び海部郡の区域 海部建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒496-8533
津島市西柳原町1-14
(海部総合庁舎6階)
半田市、常滑市、東海市、大府市、知多市及び知多郡の区域 知多建設事務所総務課 総務・建設業グループ
〒475-0828
半田市瑞穂町2-2-1
岡崎市、西尾市及び額田郡の区域 西三河建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒444-0860
岡崎市明大寺本町1-4
(西三河総合庁舎6階)
碧南市、刈谷市、安城市、知立市及び高浜市の区域 知立建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒472-0026
知立市上重原町蔵福寺124
豊田市及びみよし市の区域 豊田加茂建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒471-0867
豊田市常盤町3-28
新城市及び北設楽郡の区域 新城設楽建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒441-1354
新城市片山字西野畑532-1
豊橋市、豊川市、蒲郡市及び田原市の区域 東三河建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒440-0801
豊橋市今橋町6
STEP
3

続いて、特に記載方法でご相談を受けることが多い、工事経歴書と財務諸表について解説したいと思います。

工事経歴書の書き方について

1. 工事経歴書(様式第二号)とは?

書き方の前に、この書類の重要性を理解しておきましょう。 工事経歴書は、単に「どんな工事をしたか」を報告するだけの書類ではありません。

将来の公共工事(経審)参入を目指す会社には「基準」となる書類

もし御社が将来的に「経営事項審査(経審)」を受けて公共工事への入札を考えている場合、この工事経歴書の書き方一つで、会社の格付け(P点)が大きく変わる可能性があります。 「元請」か「下請」か、「配置技術者」が正しく書かれているか。これらはすべて審査対象です。

→経審を受ける際に過去の工事経歴としてチェックされるため、現時点で経審を受けない場合も将来に備えて適切に作成する必要があります。

許可更新や立入検査でもチェックされる

経審を受けない場合でも、5年後の許可更新時に「実態と合っているか」を確認されることがあります。適当に書いていると、最悪の場合、虚偽記載とみなされるリスクすらあります。 →ご自身での作成では不安、心配な場合は専門家に任せた方が精神衛生上は楽です。

2. 【準備編】書き始める前に用意すべき資料

いきなり様式に入力し始めると必ず混乱します。まずは以下の資料を手元に揃えてください。

  1. 直近の事業年度における工事施工金額(様式第三号)
    • ※実は、経歴書(様式二号)を書く前に、先に「業種ごとの売上合計」がわかっている必要があります。
  2. 工事台帳 または 請求書控え(1年分)
    • 工期、請負金額、注文者名がわかるもの。
  3. 契約書・注文書・注文請書
    • 特に金額の大きい工事については、契約日や工期の正確な日付が必要です。

3. 【実践編】愛知県様式・工事経歴書の書き方

ここからは具体的な入力項目ごとに、愛知県特有のルールを交えて解説します。具体的な記入方法についてはリンク先の画像(記入例①~④)を参照してください。

(1)全体編

まずは工事経歴書作成にあたっての全体的な説明(①~④)です。

① 建設工事の種類

工事経歴書は、管・電気・内装など許可を受けている建設工事の種類(業種)ごとに作成します。例えば、管工事、電気工事、内装工事の3つの許可を受けている場合は3枚の工事経歴書を作成します。許可を受けている業種については報告年度に実績が無かった場合も作成しますがその場合は「該当工事なし」と記入して作成します(こちらの「記入例③」参照)。

許可がない業種の建設工事(当然税込500万円以下)を施工した場合は”その他”として工事経歴書を作成します(こちらの「記入例④」参照)。施行していない場合は“その他”の工事経歴書の作成は不要です。

基本的には記入例③、記入例④のように ”施工した場所(会社名や地名等)+施工した工事の名称” の形で記入するケースが多いです。

※保守点検や維持管理業務(例:樹木の剪定、部品交換、管の高圧洗浄等)、人工出し(常用)等の役務提供は工事に該当せず記入対象外のため誤解されるような記載をすると修正が必要になります。また、これらの業務は後述する建設業財務諸表では兼業事業として取り扱います。

注意点

「一式工事」と「専門工事」の振り分けは慎重に行ってください。契約書に「○○一式工事」とあっても、実態が専門工事であれば専門工事として計上すべき場合があります。

🎁 無料ダウンロード特典

「実際、他の会社は工事名をどんな感じで書いてるの?」そんな疑問をお持ちになった担当者様へ。
当事務所での作成実績や建設事務所で閲覧できる事業年度終了届をもとに、業種ごとの工事名の記載事例一覧もまとめた「【愛知県版】行政書士も使ってる!事業年度終了届、作成マニュアル&提出前チェックリスト」のPDFをご用意いたしました。

「ウチの業種の場合はどう書けばいいんだろう?」「変な工事名を書いて再提出とか勘弁してほしい・・・」とお悩みの事業者様はぜひダウンロードしてみてください。

② 「税込」と「税抜」のどちらを選ぶのか?(消費税の会計処理)

決算書の会計処理に合わせて該当する方に○をします。決算書の個別注記表に記載されているはずですが、不明な場合は決算書を作成してもらった会計事務所へお問い合わせください。

  • 経審を受けない場合: 「税込」でも受理はされますが、決算書(損益計算書)の売上が「税抜」で計上されている場合、整合性を取るために「税抜」で統一するのが一般的です。

③ 記入する工事の単位

請け負った建設工事のひとつの契約(案件)ごとに「注文者~工期」までの項目を記入します。愛知県の場合は報告年度に完成した建設工事のみを記入します。

→報告年度に請負代金の請求をしたが、完成していない場合は「工事進行基準」の場合を除き対象外。中小規模の事業者様の場合で「工事進行基準」を採用しているケースはかなり少ないと思います。「工事進行基準」がどういうものかというのはこちらの記事で解説しています。

④ 記入する工事の件数

業種ごとの請負金額の額を大きい順番から足し算をして、報告年度の業種ごとの請負代金合計の60%を超えるまで、または10件までのどちらか少ない件数まで記載します。

【例】パターン1… 記入例①管工事の報告年度の請負代金合計:50,000千円(=5,000万円)

  • 上位5件の請負代金を足した金額:27,000千円 → 30,000千円(=50,000千円の60%)を超えないので件数不足
  • 6件目に4,500千円の案件を追加 → 足し算の結果が31,500千円となり30,000千円を超えるので6件でOK

【例】パターン2… 記入例②電気工事の報告年度の請負代金合計:60,000千円(=6,000万円)

  • 上位10件の請負代金を足した金額:34,050千円 → 36,000千円(=60,000千円の60%)を超えないが10件あるのでOK

(2)項目編(左側)

次に、個別項目について解説します。まずは左側(⑤~⑩)を解説します。

⑤ 注文者

下請工事の場合、「注文者」の欄には自社が請けた工事の直接の注文者の会社名、商号または名称を記入します。

【例】 
ABC不動産→DEF建設→自社 :注文者はDEF建設
ABC不動産→DEF建設→GHI工務店→自社 :注文者はGHI工務店

個人が発注者の場合は、個人の氏名が特定されないようにイニシャルのアルファベット等で表記します。

⑥ 元請又は下請の別

元請工事の場合は「元請」と、下請工事の場合は「下請」とどちらかを必ず記載。(空欄はダメ)

⑦ JVの別

共同企業体(Joint Venture:合弁事業)として行った場合に「JV」と記載。対象外の場合は空欄でOK
(よっぽど大規模な工事を中堅以上のゼネコンが請け負う場合を除き対象になることはありません)

⑧ 工事名

契約書・注文書・請求書等から施工箇所(場所)工事内容および業種がわかるように具体的に記載します。契約書・注文書・請求書等の文言どおりに記載する必要はありません。個人の住宅等の場合は個人の氏名が特定されないようにイニシャルのアルファベット等で表記します。

【例】「交通安全施設工事」だけでなく、区画線を引く作業の場合は“区画線設置工事”と追記して業種は「塗装工事」とします。防護柵の設置の場合は“防護柵設置工事”と追記して業種は「とび・土工・コンクリート工事」とします。

⑨ 工事現場のある都道府県および市区町村名

工事現場のある都道府県と市区町村名を書きます。町村の場合は郡の記載も必要です。

⑩「配置技術者」(ここが一番の危険ポイント!)

その工事現場に配置した「主任技術者」または「監理技術者」の氏名を記載します。それぞれの行の完成工事について配置技術者の氏名を記入。

一般建設業の場合は主任技術者しかいないので主任技術者のマスにレ点を記入、監理技術者の列は対象外なので必ず空欄になります。営業所技術者(旧称:専任技術者、いわゆる“専技”)と主任技術者の兼任については条件があるのでその条件を満たしているか注意します。

  • 誰でもいいわけではない: 許可申請時に登録している「専任技術者(※)」または、要件を満たす社内の技術者でなければなりません。
  • 現場代理人との違い: 現場代理人ではなく、法的に配置が義務付けられている技術者名を書きます。
  • 資格なしの場合: 実務経験で要件を満たす技術者の場合は、その方の名前を書きます。

※:本来、専任技術者は現場での業務を想定していない技術者です。小規模の事業者様の場合は「主任技術者→専任技術者」で記入・提出して問題がないのは特例が適用されているからという点についてはしっかり理解しておきましょう(この点をよくわからないままにして主任技術者=専任技術者で届出をすると自ら建設業法違反していることを証明してしまうことになります)。

(3)項目編(右側)

続いて個別項目の後半、意外とただの転記じゃない場合があり間違って記入してしまいがちな右側(⑪~⑬)の説明です。

⑪ 請負代金の額

請負代金の額は消費税抜きの金額(免税事業者は税込の金額)を千円単位で記入。当初の金額から変更があった場合は、変更後の金額を記入します。

※「工事進行基準(前述)」を適用している場合は年度をまたぐ長期の工事について売上を分割していることがあるのでその場合は、報告年度の完成工事高をカッコ書きで記入します。

⑫ うち(・PC ・法面処理 ・鋼橋上部)

下記の表のAに該当する業種の建設工事業者が、Bの工事をした場合には、Cの略称に○をつけ、請負代金の額を記入します。→要するにAに該当する業種のみが対象です。

ABC
土木一式工事業プレストレストコンクリート構造物工事PC
とび・土工・コンクリート工事業法面処理工事法面処理
鋼構造物工事業鋼橋上部工事鋼橋上部

⑬ 工期

着工年月は契約・注文時の(予定)着工月ではなく、実際に工事に着手した年月を記入。完成年月も実際に引渡しをした年月を記入します。

(4)下部の合計金額欄

地味にミスが多い下部の合計欄についてです。

⑭ 小計欄

工事経歴書に記入した工事の件数、請負代金、うち元請工事の代金(あれば)の合計を記入します。

⑮ 合計欄

工事経歴書に記入した業種について報告年度の工事件数の合計、請負代金、うち元請工事の代金(あれば)の合計を記入します。

4. よくあるNG集!再提出(要修正)となるのはこんな書類

私が実際に相談を受けた中で、愛知県下の建設事務所の窓口で指摘されやすいミスをまとめました。

  1. 合計金額が合わない
    • 工事経歴書の合計と、財務諸表(損益計算書)の完成工事高が合っていない。
    • 原因:消費税の計算ミス、兼業事業(不動産売上など)が混ざっている、振込手数料を引いた額で書いているなど。
  2. 配置技術者が重複している(専任性の違反)
    • 「重要な工事」には、技術者を専任(その現場につきっきり)で配置する必要があります。
    • 同じ時期に複数の「重要な工事」に、同じ技術者の名前が書いてあると、建設業法違反を自ら証明することになってしまいます
  3. 工期が事業年度から外れている
    今期の決算届なのに、完成日が「来期」の日付になっている、または「前期」に完成した工事が含まれている。
  4. 「請負代金の額」は千円単位
    愛知県の様式では、金額は「千円単位」で記載し、千円未満は「切り捨て」て記載するのが一般的です。(※四捨五入のケースもありますが、県の手引きや過去の提出控えに合わせてください)

「自分でやるのは思ったより大変そう…」と感じた方へ

時間がない方や確実に手続きを終えたい方向けに、当事務所では面倒な作業をすべて代行する「事業年度終了届 お任せプラン」もご用意しています。丸投げでスムーズに完了させたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。今なら、毎月先着3社様限定のモニタープラン(通常価格50,000円35,000円)もご用意しています!

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続いて決算書(財務諸表)についての解説と注意ポイントです。

決算書(財務諸表)について

「税務署に出した決算書」そのままでは受理されません!

「税理士さんが作ってくれた決算書があるから、その数字を書き写して出せばいいんでしょ?」もしそう思われている事業者様もいらっしゃるのではないでしょうか。実はそれは大きな間違いです。

毎年提出する「事業年度終了届(決算変更届)」における決算書(以降、このパートでは「建設業決算書」とします)は、建設業法独自の勘定科目に書き換えなければならないものがあります。例えば、

  • 建設工事に関する代金の後払いは「売掛金」ではなく「完成工事未収入金」にする。
  • 建設途中の工事がある場合「仕掛品」ではなく「未成工事支出金」にする。
  • 「兼業事業(不動産や建材販売など)」がある場合は、売上も原価も分けなければならない。

この作業は、単なる言葉の置き換えではありません。会社の「稼ぎの状況と健康状態」を正しく評価するための重要なプロセスです。本パートでは会計資格(日商簿記検定1級・建設業経理士2級)を持つ行政書士が愛知県の審査基準をクリアするための「科目変換(読み替え)」のポイントを徹底解説します。

Warning

提出した事業年度終了届は誰でも閲覧することが可能です。そのため、銀行などの金融機関、発注者・元請事業者といった取引先、競合先の同業者、帝国データバンクや東京商工リサーチといった調査会社が定期的に貴社の決算変更届をチェックしています。「ウチは経審は関係ないからとりあえず作って出せばいいでしょ」という事業者様もいらっしゃいますが、届出をした取引内容や決算書は誰かにに見られる可能性があるという点は覚えておきましょう。


1. なぜ「書き換え」が必要なのか?

税務申告用の決算書(この記事では以降「税務用決算書」といいます)は「税金を正しく計算するため」のものですが、建設業決算書は「その会社が建設工事を請け負うだけの財産的基礎・信用があるか」つまりお金を稼げるか、いくら持っているかを見るためのものです。

そのため、「工事に関わるお金」と「それ以外のお金」を明確に区別することが求められます。

特に、将来的に公共工事に参入するために経審(経営事項審査)を受ける場合、この建設業決算書の数値がそのまま点数(Y点・X2点)に直結するため、より慎重に行う必要があります。

2. 建設業決算書の作成方法

建設業決算書とは具体的には以下の書類一式のことをいいます。[ ] 内の番号は、愛知県の指定書式の右下に書かれている番号です。

・貸借対照表(BS) …  [1] [2] [3]  
・損益計算書(PL) …  [4] [5]
・完成工事原価報告書 … [5]
・株主資本等変動計算書 … [6]
・注記表 … [7] [8]

主な留意点

  1. 千円単位で作成します。端数の処理は原則切り捨てですが、「工事経歴書」「直前3年の各事業年度における工事施工金額」に記載した数字との不一致が起こらないように注意が必要です。特に、エクセルで作成していると小数点以下の数字が非表示で合計数値がズレることが多々あります。
  2. 建設工事と兼業事業(部品や機器等の物品売買、不動産賃貸業、役務提供等)に関する科目は分けて作成します(主な振分けは下表参照、それぞれの科目の意味等は後述)。建設工事に関連する科目は、建設業法での科目名を使用します。また、建設工事のための費用(工事原価)と販売費及び一般管理費は適切に振り分けします。
  1. 上記2の振り分けをした結果の金額が、資産の部の合計または負債及び純資産の合計額の5%以内の場合はそれぞれの区分の「その他」に含めて、まとめることができます。5%を超えた場合は個別に勘定科目を設定して表示する必要があります。下の例の貸借対照表では100万円(2,000万円×5%)を超えた場合は個別に表示しなければなりません。

3. 貸借対照表(B/S)の変換ポイント

まずは貸借対照表(資産・負債・純資産)の代表的な変換例を見ていきましょう。お手元の税務用決算書を見ながら確認してみてください。

① 流動資産の変換

最も間違えやすいのがここです。

税務申告書の科目建設業様式(様式第15号)への変換注意点
売掛金完成工事未収入金工事代金の未回収分はこれ。兼業(物品販売など)の売掛金は「売掛金」のままでOK。
受取手形受取手形工事代金の手形のみ。
仕掛品・在庫未成工事支出金まだ完成していない工事にかかった費用。
原材料・貯蔵品材料貯蔵品未使用の資材など。
前渡金立替金 など工事に関係ないものは流動資産の「その他」等へ。
注意

【専門家の視点】「未成工事支出金」と「完成工事未収入金」などの未回収項目の金額が大きいと、資金繰りが苦しいと判断される場合があります。正しく振り分けることが重要です。

② 流動負債の変換

お金を払う側の科目も、建設業独特の言葉になります。

税務申告書の科目建設業様式(様式第15号)への変換注意点
買掛金工事未払金材料屋さんや外注先への未払分はこれ。
前受金未成工事受入金工事着手前にお客様から頂いた着手金など。

具体的な作成時の注意点

次に、具体的な科目ごとの注意点です。”I-1” ”I-2”などの表記は愛知県の建設業決算書の書式で使われているものと同じです。建設業決算書の貸借対照表(B/S)書式についてはこちらでご確認ください。

I-1:現金預金

税務用決算書の「現金預金」や「現金及び預金」にある金額を転記しますが、当座預金のマイナス(当座借越)がある場合は、その金額を短期借入金に振替える等の調整をする必要があります。

I-2:受取手形

電子記録債権(いわゆる“でんさい”)については受取手形に含めます。手形割引や裏書譲渡をしている場合は、流動負債の項目との金額調整および注記表への記載が必要となります。

I-3:完成工事未収入金

建設工事に関する売掛金を振分けします。兼業事業分は売掛金のままとしますが、金額が前述のとおり資産の部合計の5%以内の場合はその他にまとめることができます。5%を超える場合は、流動資産の部で0円の科目を取消線して“売掛金”項目として使用するか(例:有価証券が0円の場合「4 有価証券 売掛金………1,234,567 」と記入)、「8 前払費用」と「9 その他」の間に「8 売掛金」の項目を挿入して表示してください。項目を挿入した場合は全体のレイアウトのずれに注意して適宜修正して下さい。

I-5:未成工事支出金

税務用決算書に「仕掛品」がある場合、その内容に建設工事にかかわるものがあれば未成工事支出金に振分けます。

I-6:材料貯蔵品

税務用決算書に「棚卸資産」や「材料」等がある場合、その内訳に建設工事にかかわるものがあれば材料貯蔵品に振分けます。

II [1]-1:有形固定資産

有形固定資産については取得価格、減価償却累計額および期末簿価を記入します。

【例】
機械・運搬具      3,000,000    ↓期末簿価
 減価償却累計額………△1,800,000    1,200,000

個別の減価償却累計額がわからない場合は法人税申告書の別表16を確認するか会計事務所にお問合せください。

I-1:支払手形

電子記録債権(いわゆる“でんさい”)については支払手形に含めます。

I-2:工事未払金

建設工事に関する買掛金を振分けします。兼業事業分は買掛金のままとします。

4. 損益計算書(P/L)の変換ポイント

次は損益計算書です。ここでは「建設業」と「それ以外(兼業)」を分ける作業がメインになります。

① 売上高の分離
  • 完成工事高: 建設工事の請負による売上。
  • 兼業事業売上高: 不動産販売、資材販売、除雪業務(委託契約の場合)などの売上。

※重要:

ここで計上する「完成工事高」は、別途作成した「工事経歴書(様式第2号)」の合計額と1円単位(実際に記載するのは千円単位)で完全に一致していなければなりません。

② 原価の分解(完成工事原価報告書)

税務申告書では「当期製造原価」としてまとまっているものを、建設業様式では以下の4つに分類して記載する必要があります。

  1. 材料費: 工事のために仕入れた材料代。
  2. 労務費: 自社の現場作業員に支払った賃金(※事務員や役員報酬は入りません)。
  3. 外注費: 下請業者に支払った工事代金。
  4. 経費: 現場の水道光熱費、現場消耗品、機械のリース代、法定福利費など。
注意

【よくあるミス】「兼業事業(不動産賃貸業、産廃の運搬業等)」がある場合、その原価は「完成工事原価」に入れてはいけません。「兼業事業原価」として別に計上する必要があります。これを混同すると、利益率の計算がおかしくなり、建設事務所の窓口で訂正を求められます。

具体的な作成時の注意点

次に、具体的な科目ごとの注意点です。”I” ”II”などの表記は愛知県の建設業決算書の書式で使われているものと同じです。建設業決算書の損益計算書(P/L)と完成工事原価報告書書式についてはこちらでご確認ください。

損益計算書(P/L)作成時の主な注意点

I:売上高

売上高を振分けします。建設工事分は「完成工事高」へ、兼業事業分は「兼業事業売上高」とします。

II:売上原価

売上原価を振分けします。建設工事分は「完成工事原価」へ、兼業事業分は「兼業事業売上原価」とします。完成工事原価は損益計算書の2ページ目(右下に[5]とあるページ)の下部で計算した数字になります。

Success

順番が前後しますが先に「III:販売費及び一般管理費」の振分けと完成工事原価報告書を作成することをお勧めします。

III:販売費及び一般管理費

税務用決算書の販売費及び一般管理費の科目別明細表をもとに作成しますが、工事のためにかかったことが明らかな費用については振分けし、その金額を完成工事原価報告書の「II 労務費」「III 外注費」「IV 経費」のいずれかの項目に記入します(例:工事のためにしか使わない車両の減価償却費や車両費、専ら工事のみに従事する社員の労務関連費、外注業者へ支払った外注費等)。

なお、税務用決算書と建設業財務諸表の科目名が一致しない場合は下記のように対応することが多いです。

  • 消耗品費  → 事務用品費
  • 修繕費   → 修繕維持費
  • 水道光熱費 → 動力用水光熱費
  • 旅費交通費 → 通信交通費
  • 通信費   → 通信交通費
  • 賃借料   → 地代家賃

完成工事原価報告書作成時の主な注意点

I:材料費

報告年度に工事のために使用した材料費の金額です。基本的には以下のような計算で出てくる金額です。

報告年度前年の貸借対照表上の材料貯蔵品の金額
+ 報告年度に購入した材料費の金額
- 報告年度の貸借対照表上の材料貯蔵品の金額
= 報告年度の完成工事原価報告書の材料費の金額

【おまけ】注記表作成時の主な注意点

株式譲渡制限会社(※)については以下の項目は記載不要です。記載が必要な事項について該当事項が無い場合においては、「該当なし」と記載します。

※:登記簿や定款に「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会(取締役会)の承認を受けなければならない。」といった記載のある会社のことをいいます。

・1 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況
・4-2 会計上の見積り
・5 会計上の見積りの変更
・7 貸借対照表関係
・8 損益計算書関係
・10 税効果会計
・11 リースにより使用する固定資産
・12 金融商品関係
・13 賃貸等不動産関係
・14 関連当事者との取引
・15 一株当たり情報
・16 重要な後発事象
・17 連結配当規制適用の有無
・17-2 収益認識関係

4. 愛知県様式の「単位」ルール

愛知県の手引きでは、原則として「千円単位(千円未満切り捨て)」での記載が求められます。(※自社の過去の提出書類と整合性を取ってください)しかし、元々の決算書は「1円単位」で作られています。

これを千円単位に直していくと、必ずどこかで「(足し算をした結果)端数のズレ」が生じます(特にエクセルを使って自動集計している場合)。例えば四捨五入で千円単位にしていると

1円単位千円単位
123,456,789円123,457千円
901,234,567円901,235千円
①+②1,024,691,356円上の2つの足し算は1,024,692千円
(左の四捨五入は1,024,691千円)

のようになることがあります。その結果、以下のようなことが起こり得ます。

  • 資産合計と負債・純資産合計が合わない。
  • 利益の額が数千円ズレる。

この場合、適当な科目(「その他」など)で端数調整を行い、貸借が必ず一致するように調整しなければなりません。これが地味ですが時間のかかるパズルのような作業です。

最後に悩む、「事業報告書」の自由書式

建設業決算書まで作成できたらあとは事業報告書の作成です。

事業報告書については愛知県のホームページに指定の書式が無く、自由に作ってOKです。そのため、役員会や株主総会のために社内で作成したものがあればそれを使うことも可能です(ただし、科目や数字については建設業決算書のものが使われている必要があります)。

基本的には報告年度と前年の売上高や利益の比較、自社の状況に関するコメントがあれば大丈夫です。

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「そんなこと言われても自由書式っていうのが一番困るんだけど・・・」というご担当者様へ。
当事務所や他の事業者さんが届出に使っている事業報告書のサンプルをいくつかまとめた「【愛知県版】行政書士も使ってる!事業年度終了届、作成マニュアル&提出前チェックリスト」のPDFをご用意いたしました。

「どんな数値の比較をすればいいの?」「業績に関するコメントってどう書けばいいの?」とお悩みの事業者様はぜひダウンロードしてみてください。

事業年度終了届は「その年だけの書類」ではありません

事業年度終了届は、単に「毎年提出すれば終わり」の書類ではありません。

  • 建設業許可の更新
  • 業種追加
  • 元請・発注者からの提出要請
  • 将来的な手続での確認資料

など、後から参照される履歴資料として扱われることがあります。そのため、

その年は問題なく受理された=内容が適切だった

とは限らない点に注意が必要です。まれにですが、担当者が変わると受理されないこともあり得ます。

愛知県のルールに従って、確実に期日(決算日後4ヶ月以内)までに提出するようにしましょう。


【免責事項】本記事は愛知県発行の手引きや過去の当事務所における事業年度終了届の提出実績等をふまえて作成しているものですが、手引きの内容をよくあるケースに特化してわかりやすく説明することを目的としたものです。記入する内容については個々の事業者様により異なるものもあるため事業年度終了届の受理およびその他建設業法等の法令遵守を100%保証するものではなく、当記事の内容を参照したことにより発生する損害については一切の責任を負いかねます。個別具体的な詳細につきましては必ず愛知県の発行する手引きやQ&Aをご参照いただくか、当事務所までお問い合わせください。(お問合せフォームはこちら