見落としがちな落とし穴を実務目線で解説します。

機械器具設置工事業の建設業許可を検討されている企業様から、よくいただくご相談の一つが「専任技術者って誰を立てればいいのか分からない」というものです。
結論から言うと、機械器具設置工事業は専任技術者の要件が比較的厳しく、安易な判断で申請すると不許可や再申請になりやすい業種です。
この記事では、専任技術者の基本要件と、現場で実際に起きやすい「見落としポイント」を工作機械商社出身の行政書士が解説します。
専任技術者の基本要件(機械器具設置工事業)
機械器具設置工事業で専任技術者となるためには、一般的に以下のいずれかを満たす必要があります。
①指定学科+実務経験
- 大学・高専・高校等の指定学科卒業
- 卒業後、一定年数の実務経験(3年または5年)
②学歴なしでの実務経験
- 原則10年以上の実務経験
③国家資格
- 技術士(機械部門など)
- 1級・2級施工管理技士(種目による)など
ここまでは他業種と大きく変わりませんが、問題は「実務経験の中身」です。
機械器具設置工事業の専任技術者要件に朗報!
機械商社や販売店・代理店の場合は理系人材が少なく、また国家資格取得も難しいものばかりのため実務上は10年の実務経験で専任技術者要件を満たすことが多かったのですが、令和5年に緩和され機械商社や販売店・代理店でも機械器具設置工事業の取得へのハードルが下がりました。緩和内容の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
【重要】機械器具設置工事は「何でも経験になるわけではない」
実務上、最も悩むことが多いのがこのポイントです。機械器具設置工事業で求められる経験は、単なる機械の取扱いではなく、
- 工場設備の据付
- 生産ラインの組立・設置
- 大型機械の搬入・据付・調整
といった「据付を含む工事性のある業務」です。例えば、以下のような業務では実務経験にカウントできないので注意が必要です。
| 経歴 | 判定 |
|---|---|
| 機械商社での営業 | ×(原則不可) |
| 機械のメーカーにおける設計 | △(内容次第) |
| 保守・メンテナンスのみ | ×または△ |
| 据付工事の現場管理 | 〇 |
つまり、「機械に関わっていればOK」ではなく、建設工事としての実態があるかが重要になります。
よくあるNGパターン
実際の相談で多い「危険なケース」を紹介します。
ケース①:営業経験を実務経験として申請
機械商社や販売店、代理店からの相談で多いのがこのパターンです。納入立会いや試運転に関与していても、それだけでは「工事経験」とは認められない可能性が高いです。
ケース②:メンテナンス中心の経歴
保守点検は重要な業務ですが、「設置工事」とは別物と判断されることがあります。「○○サービス」「○○エンジニアリング」といった名称の工作機械メーカーでよくあるメンテナンス子会社などのように特に、分解・保守・修理がメインで据付工事の関与が薄い場合は要注意です。
ケース③:証明資料が不足している
専任技術者の実務経験は、単に「やっていた」と主張するだけでは通りません。実務経験は関連する書類で客観的に裏付ける必要があります。ここが不十分だと、要件を満たしていても証明できずに最悪の場合は不許可となるケースもあります。
経験年数があっても、証拠がなければ「足りない」と判断されることも
実際にご相談をいただいた事例です。状況をお聞きする限りでは”現場経験は十分”かつ”技術レベルと経験にも問題無し”でしたが、
- 見積書や注文書があったり無かったり
- 請求書はあるが件名があいまい(「○機械名○一式」の記載ばかり)
- 元請案件なのか下請けなのか関係もよくわからず
- 現金での受け渡しをする場合もあり入金履歴が無い案件もある
とのこと。そのため実務経験を客観的に確認できず、行政窓口から申請書類不備で却下される可能性が非常に高かったためご依頼をお断りしました。結局、事業者様は利益率の低い下請けのまま継続、また数年の実務経験を積み重ねる(≒やり直し)ことになりました。そうならないように対策についてこちらの記事にまとめています。
見落とされがちな「専任」の意味
専任技術者は、営業所ごとに専任で配置する必要があります。つまり、
- 他社の技術者と兼任している
- 他営業所と兼務している
- 現場に常駐していて営業所にいない(但し、特例有)
こうした状態では要件を満たさない可能性があります。特に、現場での仕事がメインで技術者の数が少ない企業では「気づいたら専任違反」というケースも少なくありません。
許可取得後のリスクにも注意
専任技術者は取得時だけでなく、継続的に要件を満たす必要があります。
例えば、
- 退職・休職してしまった
- 実態として専任ではなくなった
- 実務経験の内容に疑義が出た
といった場合、許可取消や営業停止につながる可能性もあります。ここが「許可取得時にとりあえず通ればいい」と考えてしまう最大のリスクです。
自社で進める場合の注意点
ここまで見てきた通り、機械器具設置工事業の専任技術者は
- 判断が難しい(グレーゾーンが多い)
- 証明が面倒
- 許可後のリスクもある
という特徴があります。特に多いのが、
「いけると思って申請したがダメだった」
「通ったが後から指摘された」
というケースです。時間とコストをかけた結果、不許可や再申請になると事業計画にも影響が出ます。
まとめ
最低限、以下は事前に確認しておく必要があります。
- これまでの工事内容が「据付工事」に該当しているか
- 実務経験年数が足りているか
- 証明資料を揃えられるか
- 専任性を維持できる体制か
一つでも不安がある場合は、早めに外部の専門家(行政書士等)に相談することも選択肢のひとつです。
【免責事項】本記事は、「建設業法」をはじめとする関係法令について、一般的な情報提供を目的として作成したものです。
個別具体的な事案への適用や、法的判断を行うものではありません。
実際の業務運用においては、事業内容、取引形態、現場の実態、所在地(都道府県)ごとの条例や運用、今後公布される政令・規則等により、求められる対応が異なる場合があります。
本記事の内容を基に行動されたことにより生じた損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
具体的な対応については、専門家にご相談のうえ、貴社の実情に即した判断を行っていただくことをおすすめします。
投稿者プロフィール

- (株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
- 自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。










