電気工事業は、発電設備・変電設備・送配電線・構内電気設備などを設置する専門性の高い工事業種です。建設業許可を取得するには、営業所ごとに「専任技術者」を配置する必要があります。

この記事では、電気工事業における専任技術者の要件について、学歴・実務経験・国家資格などの観点から詳しく解説します。

※2024年12月の建設業法施行規則改正により、「専任技術者」は法令上「営業所技術者」と名称変更されましたが、まだ「専任技術者」という呼称が広く使われているため本記事でも専任技術者の用語で説明します。

技術力の証明方法(学歴・経験・資格)

電気工事業では、他の業種と異なり「無資格者による実務経験のみ」で専任技術者になることは原則認められていません(そもそも電気工事をするために資格が必要なため)。そのため、資格取得後の実務経験が重要になります。

特定建設業の場合はやや複雑ですのでこちらの記事では一般建設業の場合についてのみ説明します。一般建設業と特定建設業の違いについてはこちらの記事でご確認ください。

「一般・特定」「知事・大臣」4マスで理解する建設業許可の全体像

建設業許可というと「一般建設業と特定建設業のどちらにするか」という話題がよく登場します。しかし建設業許可は「一般・特定」だけで決まるものではありません。 実際には、 の2つの軸で構成されており、2×2=4つのパターンが存 […]

一般建設業の場合、以下のいずれかを満たすことで専任技術者要件をクリアできます:

国家資格の保有

資格を取得しているだけでよいものと実務経験年数が求められるものがあります。一般建設業の電気工事業を取得するの場合の主要な国家資格等については以下の通りです。(詳細につきましては手引きをご確認いただくか、当事務所までお問合せください)

【技術検定(施工管理技士)】

  • 一級電気工事施工管理技士
  • 二級電気工事施工管理技士

【電気工事法】

  • 第一種電気工事士(免状)
  • 第二種電気工事士(免状)+実務経験3年以上(免許交付後、登録電気工事業者での経験)

【電気事業法】

  • 電気主任技術者(第1種~第3種)+実務経験5年以上

【その他の国家資格】

  • 建築設備士(実務経験1年以上)
  • 計装士(実務経験1年以上)

指定学科卒業+実務経験

電気工事の場合は指定学科として「電気工学又は電気通信工学に関する学科」が手引きに例示されています。これら、またはこれらに準じた()指定学科を高校で卒業、大学・短期大学・高等専門学校(高専)で卒業した場合のそれぞれで必要な実務経験は以下の通りです。

  • 高校卒業:実務経験5年以上
  • 大学・短期大学・高専卒業:実務経験3年以上

※:例示された名称の学科でなくても実際に受けた授業の内容から指定学科と認められる場合があります。確認したい場合は各建設事務所の窓口に問い合わせるか、当事務所までご相談ください

実務経験の証明方法

実務経験による申請を行う場合、以下のような書類が必要です:

  • 工事契約書、注文書、請求書
  • 工事写真、日報、施工台帳
  • 健康保険・雇用保険の加入記録

特に第二種電気工事士による申請では、「免許交付後に登録電気工事業者で常勤として施工した経験」が求められます。登録のない事業所での経験は原則カウントされませんので注意が必要です。

証明書類の記載事項等が曖昧な場合は、複数の資料を組み合わせて実態を示す必要があります。特に個人事業主や一人親方の場合は、確定申告書や帳簿類も有効です。より詳しい実務経験の証明方法、建設業許可申請時の書類の作成方法については別途記事を作成してご説明したいと思います。

よくある注意点

  • 無資格者の経験は不可:電気工事業では、資格を持たない者の実務経験は専任技術者要件として認められません。
  • 登録制度との関係:建設業許可だけでは電気工事を自社施工できません。別途「電気工事業者登録」が必要です。
  • 資格と経験の選択:資格取得後の実務経験が必要なケースが多いため、資格取得のタイミングと勤務先の登録状況を確認しましょう。

⚠️「実務経験●年」は、自己申告ではありません

要件を見て「資格や学歴はないけど、自分は●年以上やっているから大丈夫だ」と安心された方もいるかもしれません。しかし、建設業許可申請で気を付けるべきところは、「あなたの記憶にある●年」ではなく「書類で裏付けられた●年」しか評価されないという点です。

専任技術者の実務経験年数の証明においてよくある「不許可・断念ケース」は以下の3つです。

①書類がそもそも(管理不足で)そろわない

現場が忙しく、書類管理に手が付けられず数年前の書類がどこにあるか分からない、あるいは無くしてしまったというケースです。

  • よくある不備: 5年分、10年分の「契約書」、「注文書」や「請求書と入金が確認できる通帳」がきちんと揃っていますか?
  • 現実: 引越しや大掃除で処分してしまったり、データが消えていたり。「あったはずの書類がない」ことに気づいた瞬間、何年もの積み上げがゼロになってしまうことも。

②「どんな工事だったのか」の書きぶり不明なケース

実務経験を証明する「注文書」や「請求書」の内容が重要です。

  • NG例: 「○○様邸工事」「一式工事」
  • OK例: 「○○様邸 屋根改修工事(左官工事などの特定工種名)」

どんなに経験があっても、書類上の名称から判断できないと、役所は「その工事業種を経験した証拠」として受け付けてくれません。

③「前職会社の協力依頼」がしにくい・できないケース

今の会社での年数が足りない場合、前の会社での経験を合算します。

  • 前の会社から「実印」を押してもらう必要がある。
  • 当時の「契約書」や「通帳のコピー」を借りる必要がある。 「辞めた会社に自分からそこまで頼めない……」となって、あと数ヶ月の証明ができずに不許可になる方や申請を断念される方が後を絶ちません。※行政書士なら代わりに話をすることもできます。

【愛知県・東京都限定】実務経験年数を無駄にしないための「書類診断」やってます

せっかく今日まで積み上げてきたキャリアも、証明書類の不備ひとつで「存在しないもの」として扱われてしまいかねません。

  • 「そもそも、今の保管状況で審査に通る書類が揃っているか?」
  • 「紛失した書類がある場合、別の書類で代用できないか?」
  • 「もし今足りないなら、明日から何の書類をどう残すべきか?」

これらを判断するには、自治体ごとの「ローカルルール」や「審査官の着眼点」を知る専門家の目が必要です。

「もっと早く相談していれば、今ごろ許可が取れていたのに」 後の祭りになる前に、まずはお手元の書類が申請につかえるかどうか、当事務所では無料での事前診断を承っています。

もし書類が足りなくても、諦めるのはまだ早いです。確定申告書、通帳、注文書……バラバラに残っている断片から、パズルのように証明を組み立てるのが我々プロの仕事です。

「現時点である資料でOKなのか?」「今後なにに気を付ければよいのか」を一緒に整理することから始めませんか?まずは、当事務所までお気軽にお問合せください。※:東京都については提携事務所との共同対応になることがあります。

【免責事項】本記事は、「建設業法」をはじめとする関係法令について、一般的な情報提供を目的として作成したものです。
個別具体的な事案への適用や、法的判断を行うものではありません。
実際の業務運用においては、事業内容、取引形態、現場の実態、所在地(都道府県)ごとの条例や運用、今後公布される政令・規則等により、求められる対応が異なる場合があります。
本記事の内容を基に行動されたことにより生じた損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
具体的な対応については、専門家にご相談のうえ、貴社の実情に即した判断を行っていただくことをおすすめします。

投稿者プロフィール

古井 竜文(たつのり)
古井 竜文(たつのり)(株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。