そのひな形、実は法令違反かもしれません

「昔から使っている契約書」が、いちばん危ない理由

「この契約書、もう何年も使ってるけど今までトラブルもないから大丈夫だと思う」

発注者側の法務・契約実務に携わっている方がいつも気になりつつも、通常業務が多忙でそう自分に言い聞かせているのではないでしょうか。実際、設備工事や工作機械の据付工事、電気・管工事の請負契約では、10年以上前に作られた契約書ひな形が、そのまま現役というケースも珍しくありません。しかし、2024年〜2026年にかけての建設業法改正・運用強化により、

「昔は問題にならなかった条項」

が、今後は行政指導・是正勧告の対象になる可能性が急速に高まっています。

しかも問題なのは、
👉 悪意がなくてもアウトになる
👉 発注者側の契約条項が原因で指摘される
という点です。

本記事では、建設業許可を持つ工作機械商社で法務・リスク管理部門の担当者として契約実務に従事していた行政書士が、発注者(元請)が特に陥りやすい「即アウト」になり得るNG条項を5つ、具体例ベースで解説します。


NG条項①:著しく短い工期を一方的に押し付ける条項

よくある文言例

「受注者は、発注者の指定する工期を厳守するものとし、いかなる理由があっても工期延長は認めない。」

一見すると「よくある契約条項」に見えますが、合理性を欠く短工期の一方的指定は、建設業法上の問題行為と評価されるリスクがあります。

特に設備系工事では、

  • 機器の製作・輸送遅延
  • 現場の前工程の遅れ
  • 試運転調整の長期化

など、元請側だけではコントロールできない要素が多く存在します。それにも関わらず

「とにかくこの日までに終わらせろ」

と強要していると解釈される条項を入れていると、不当な使用条件の押し付けとして指摘される可能性があります。


NG条項②:追加・変更工事を事実上無償でやらせる条項

よくある文言例

「本工事に付随する一切の作業は、本契約金額に含まれるものとする。」

この条文、非常に危険です。設備工事では、

  • 養生・仮設
  • 搬入経路変更
  • 試運転立会いの追加
  • 軽微な改修対応

など、「やって当然」「でも見積には入っていない」または「受注者側が(明確な形で)記載し忘れた」作業が山ほど発生します。これらをすべて「一切の作業」に押し込めてしまうと

✅ 不当な対価不払い
✅ 追加工事の無償強要

として問題視されやすくなります。結果的に、

👉 下請との関係悪化
👉 現場の士気低下
👉 係争・是正勧告

という、発注者側にとっても好ましくない事態を招くことになります。


NG条項③:支払期日を過度に引き延ばす条項

よくある文言例

「工事完了後、発注者の検収完了日から180日以内にでんさいで支払う。」

近年、ここは特に見られています。検収を理由に支払を長期間先送りする条項は、実質的に資金繰りリスクを下請に一方的に負わせるものと評価されがちです。特に、

  • 月締め・出来高払いが前提の現場
  • 中小の専門業者

にとっては、致命的な問題になります。

「検収が終わらないから払えない」

という運用も含め、契約条文+実運用の両面でアウトになる可能性があります。


NG条項④:発注者に都合のいい一方的な責任免除条項

よくある文言例

「本工事に関して発生した一切の損害は、受注者の責任とする。」

設備工事・電気工事の現場では、

  • 発注者支給品の不具合
  • 設計情報の不備
  • 指示変更の遅れ

など、発注者側起因のトラブルも現実には多く発生します。それにも関わらず、「一切受注者責任」としてしまうと、責任範囲が不明確・不合理と判断される可能性があります。結果として、

👉 契約があるのに揉める
👉 交渉コストが想定外に発生

という、本末転倒な事態になりがちです。


NG条項⑤:法改正を無視した「古い定義」のままの条項

最後は見落とされがちですが、非常に重要です。

  • 瑕疵担保責任の旧表現
  • 下請代金・価格転嫁に関する旧概念
  • 曖昧な「協議するものとする」条文の多用

これらを放置したままの契約書は、「内容以前に、更新されていないこと自体」がリスクになります。

行政から見れば、「契約管理体制がアップデートされていない会社」と評価されかねません。


「違法じゃないですか?」と言われてからでは、もう遅い

ここまで見てきた通り、問題になるのは「ブラックな契約」だけではありません。

  • 悪気はない
  • 昔からの慣行
  • 現場では当たり前

そうした条項こそが、今はもっとも危ういのです。契約書は、

✅ 作った瞬間ではなく、
✅ 使い続けた結果

にリスクが顕在化します。



まとめ

もし、

  • 「うちの契約書、今の法改正に合ってるのか?」
  • 「この条項、グレーじゃないか少し不安…」
  • 「下請とのトラブルを未然に防ぎたい」

そう感じたら、早めに専門家の視点で一度チェックしておくことをおすすめします。当事務所では、工作機械商社の法務・リスク管理部門での実務経験を踏まえ、発注者側の立場を理解した契約書の作成・チェックを行っています。初回のご相談は無料です。「この条文だけ見てほしい」といったピンポイントのご相談も可能です。「念のための確認」という感覚で、お気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

古井 竜文(たつのり)
古井 竜文(たつのり)(株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。