経営事項審査(経審)の評点を決定する重要な要素のひとつが「経営状況分析(Y点)」です。Y点は企業の財務健全性を評価する指標であり、点数が低いと総合評点に大きく影響します。本記事では、Y点の仕組み、評価項目、財務諸表の改善による点数アップの方法を詳しく解説します。

この記事でわかること

  • Y点の意味と評価項目
  • 財務諸表のどこが評価されるのか
  • 点数アップのための財務改善策
  • よくある失敗と注意点

1. Y点とは?経営状況分析の役割

Y点は、企業の財務健全性を評価する指標です。公共工事を発注する側は、倒産リスクの低い業者を選びたいと考えています。そのため、経審では財務諸表を分析し、企業の安全性を数値化します(要するに発注したら途中でつぶれてしまうような会社に発注しないということです)。

ポイント

  • Y点は経審の総合評点に大きく影響
  • 財務諸表の内容がそのまま点数に反映
  • 赤字や債務超過は大きな減点要因

2. Y点の評価項目と計算方法

Y点は、以下の8つの財務指標をもとに計算されます。

評価項目

(1)純支払利息比率

借入金に対する利息負担の大きさを示す指標(%)で以下の計算式で求められます。

純支払利息比率=(支払利息-受取利息配当金)÷ 総売上高 ×100

注目すべきは太文字、分子の部分で「借入金が少ない=支払利息の額が少ない会社」ほど高評価となります。

(2)負債回転期間

売上高に対して負債がどの程度あるかを示す指標(○か月)で以下の計算式で求められます。

負債回転期間=(流動負債+固定負債)÷ 月商 ※1
※1:総売上高を年間の月数である12で割って算出

負債が少なく、効率的な経営ができている会社ほど評価が高くなります。(1)の純支払利息比率とも連動しますが、借入金が少ない場合は評価が高くなります。なお、理論上の話ですが決算日に借入金を一時的に返済し、翌期になって再度借入するとこの数値は良くなります。

(3)総資本売上総利益率

会社が保有する資産(≒土地・建物、機械、車両等の財産)を活用してどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。率なのでパーセンテージの指標です。

総資本売上総利益率=売上総利益÷総資本(2期平均した値)× 100

設備や資金を有効活用して利益を確保している企業が有利になります。土地・建物や機械、車両を借りている場合は総資本が少なくなるため「持たざる経営」をしている場合は数値が良くなる傾向にあります。

(4)売上高経常利益率

売上に対して経常利益をどれだけ確保できているかを見る指標(%)で以下の計算式で求められます。

売上高経常利益率=経常利益 ÷ 総売上高 × 100

本業でしっかり利益(販売費及び一般管理費を引いた後の経常利益)を出している企業ほど高得点につながります。

(5)自己資本対固定資産比率

固定資産をどの程度自己資本(返済する必要の無いお金)でまかなえているかを以下の計算式で示します。率なのでパーセンテージの指標です。

自己資本対固定資産比率=自己資本(≒決算書の「資本の部」の合計)÷ 固定資産 × 100

借入に依存せず財務基盤が安定している会社ほど評価が高くなります。こちらの指標も「持たざる経営」をしている場合は数値が良くなる傾向にあります。

(6)自己資本比率

総資産のうち自己資本が占める割合(%)で以下の計算式で求められます。

自己資本比率=自己資本(≒決算書の「資本の部」の合計)÷ 総資産 × 100

建設業にかぎらず企業経営においては特に重要な指標の一つであり、自己資本比率が高いほど財務の安全性が高いと評価されます。

(7)営業キャッシュフロー

(投資等による配当ではなく)本業によってどれだけ現金を生み出しているかを示します。ただし、経審の経営状況分析で使われる営業キャッシュフローは一般的なものとは異なり、以下の計算式で求められます。

営業キャッシュフロー=営業キャッシュフロー ※2(2期平均)÷ 1億円
※2:営業キャッシュフローの計算は複雑ですが平たく言うと本業でどれだけ(売上金額ではなく)現金が増えたかです。

利益が出ていても資金繰りが悪い企業は評価されにくく、安定的なキャッシュ創出が重要です。

(8)利益剰余金

これまで積み上げてきた利益の蓄積額です。こちらも(7)営業キャッシュフローと同様に経審の経営状況分析で使われる利益剰余金は一般的なものとは異なり、以下の計算式で求められます。

利益剰余金=(決算書の)利益剰余金 ÷ 1億円

いずれにしても、長期間にわたり安定して利益を確保し、その蓄積が多い企業ほど高く評価されます。

計算方法

  • 各財務指標に係数を乗じて、合計値を点数化。
  • Y点の最高点は1,595点、最低点は0点。

3. 財務諸表で評価されるポイント

Y点は、建設業会計の基準に読み換えた決算書の数字をもとに評価されます。

重要な書類

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 注記表

チェックポイント

  • 自己資本比率が低いと減点
  • 営業キャッシュフローが小さい(金額が少ない)と資金繰りリスクが高いと判断
  • 負債回転期間の数字が大きい(期間が長い)と財務負担が重いと評価

4. Y点を上げるための財務改善策

改善策1:自己資本比率を高める

  • 増資や利益の積み上げで自己資本を増やす
Success
自己資本比率を高める具体的な方法

自己資本比率は経営状況分析において重要な評価項目です。例えば中小建設業では、代表者から会社への貸付金(役員借入金)が多く計上されているケースがあります。このような場合、税理士等の専門家と相談したうえで、

・役員借入金を資本金へ振り替える(DES:デット・エクイティ・スワップ)
・増資を実施する
・利益を内部留保として蓄積する

といった方法により自己資本を増やせる可能性があります。特に役員借入金が多い会社では、財務内容の見せ方を改善することで経営事項審査の評価向上につながる場合があります。ただし、税務上・法務上の影響もあるため、実施に当たっては税理士や専門家への相談をおすすめします。

改善策2:キャッシュフローを改善

  • 着手金を多くする、売上代金の早期回収、資材等の在庫を少なくする

改善策3:利益率を向上

  • 原価管理を徹底し、利益率を改善

5. よくある失敗と注意点

失敗例1:赤字決算を放置

  • 対策:利益改善策を早期に実施

失敗例2:借入金の過剰

  • 対策:資金調達のバランスを見直す

失敗例3:決算書の誤記

  • 対策:税理士に確認してから提出

6. 中小企業が取り組むべき具体策

  • 経審を意識した決算対策を税理士と相談
  • 技術者資格やISO認証と並行して財務改善
  • 行政書士と定期的な状況確認をし、経審対策を年間を通じて継続的に実施

7. まとめ:Y点を理解して経審の評点を強化しよう

Y点は、企業の財務健全性を示す重要な指標です。財務諸表を改善することで、総合評点を大きく引き上げることができます。
公共工事の入札を目指すなら、財務戦略を立ててY点を強化しましょう。当事務所では日商簿記検定1級、建設業経理士2級の資格を持ち、建設業会計に強い行政書士として経審ランクアップを見据えたご支援が可能です。初回のご相談は無料ですのでお気軽にお問合せください。


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投稿者プロフィール

古井 竜文(たつのり)
古井 竜文(たつのり)(株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。