建設業許可の取得をご検討される事業者様から、「長年、建設業を営んできた実績はあるけれど、過去の書類が揃うかどうか不安です」というご相談をよくいただきます。

建設業許可を取得する上で、要件を満たしているかどうかの確認作業は非常に重要です。中でも、多くの事業者様が「最大の壁」と感じるのが「経営業務の管理責任者(通称:経管)」としての実務経験の証明です。愛知県の審査では、客観的な資料に基づいて過去の経験を厳格に証明することが求められるため、書類の準備には一定のコツが必要です。
本記事では、愛知県で建設業許可(知事許可・一般)の取得を目指す事業者様に向けて、許可を取得していない期間の経営経験を証明するためのルールと、当事務所が推奨する「経験年数資料用マス」を使った分かりやすい資料準備の方法を解説します。
1.「経営業務の管理責任者(経管)」の経験証明とは?
建設業許可を受けるためには、適正な経営体制を有していること、つまり「経営業務の管理責任者(経管)」を営業所に常勤で配置することが法律で義務付けられています。
経管になるための代表的な要件は、「建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者」であることです。
法人の場合は常勤の取締役等の役員、個人の場合は事業主本人(または支配人登記された者)として、建設業の経営に携わってきた5年間(60ヶ月)以上の期間が必要となります。
すでに建設業許可を持っている他社で取締役等を5年以上務めていた場合(過去に経管として登録されていた場合)は、行政の記録があるため比較的スムーズに証明が可能です。しかし、多くの方が直面するのが「建設業の許可を受けていない業者での経験(許可を持っていない個人事業主や法人役員としての経験)」で5年を証明するケースです。
この場合、「実際に建設工事を請け負って経営していた実態」を、第三者が見ても明らかな客観的証拠(=書類のコピー)によって、5年分積み上げて証明していく必要があります。
2.愛知県の審査における「12ヶ月ルール」について
過去の工事実績を証明する際、愛知県の審査で特に注意しなければならないのが「期間の連続性」です。
愛知県の実務では、用意した請負実績の書類(請求書や注文書など)と、その次の実績書類との間隔が「12ヶ月」を超えてはならないというルールがあります。
例えば、2023年11月に発行した請求書の次の請求書日付が、2024年12月になってしまったとします。この場合、書類の日付間隔が12ヶ月を超えてしまっているため、行政の審査上は「その期間、継続して建設業を営んでいなかった」と判断される可能性があります。その結果、それまで積み上げてきた経験期間が審査上は認められなくなってしまいます。
つまり、5年間(60ヶ月)の経験を証明するには、過去に遡って、書類と書類の間隔が12ヶ月以上空かないように、連続して証拠を繋ぎ合わせる必要があります。
第3章|
3.経験期間を視覚的に管理する「経験年数資料用マス」の活用法
この「12ヶ月以上間隔を空けない」というルールを満たす書類を探す作業は、文章ではわかりずらく、パズルのような難しさがあります。そこで当事務所では、お客様にスムーズに書類をご準備いただくため、専用の「経験年数資料用マス」をエクセルまたはPDFでお渡ししています。
これは、下の画像のような縦軸に「年(令和2年、令和3年…)」、横軸に「月(1月〜12月)」が書かれたカレンダーのようなマス目の表です。

マス目シートの使い方
過去の請負実績を証明する書類(請求書や注文書など)を探す際、この表のマスを塗りつぶしていくイメージで作業を進めます。ルールはただ一つ、「表のマス目が12マス(12ヶ月)以上連続で空欄にならないようにする(=11マスは空いてもOK)」ことです。
月ごとに1件ずつ書類を見つけていく必要はありません。「この月の請求書があったから、次はここからマスが11個空かない(12ヶ月以内)のこの辺りの月の書類を探そう」というように、視覚的に空白期間を管理しながら書類をピックアップしていただけます。これにより、「あと少しで期間が途切れてしまう」といった見落としを未然に防ぐことができます。
4.審査をスムーズに通過するための「客観的資料」の集め方
マス目を埋めるための「証拠書類」とは、具体的に何を準備すればよいのでしょうか。愛知県では、以下の「書類A(事業主・役員であったベース証明)」と「書類B(工事を請け負った客観的証拠)」をセットで用意します。
①経営のベースを証明する書類(書類A)
- 個人事業主の場合:過去5年分の「確定申告書(第一表から収支内訳書等一式)」+「所得証明書(市区町村発行の原本)」。確定申告書の職業欄に建設業と記載されているかなどが確認されます。自己申告である確定申告書と公的機関の証明書を掛け合わせることで、実態を裏付けます。
- 法人の役員の場合:過去5年間継続して役員であったことがわかる「登記事項証明書」。会社の目的欄に「建設業」に関わる記載(「施工」などが読み取れること)があることが重要です。
②工事請負実績のセット(書類B)
マス目を埋めるための工事実績証明としては、以下のいずれかのセットを各期間ごとにご用意いただきます。
- 工事請負契約書の写し
- 注文書 + 請書(控え)の写しセット
- 請求書、注文書、請書控のいずれか + 入金が明確にわかる通帳等のコピー
実務上、すべての工事で契約書を交わしているケースは稀なため、「3. 請求書 + 通帳のコピー」**の組み合わせで証明していくのが最も一般的です。
書類を準備する際の重要なチェックポイント
せっかく過去の書類を探し出しても、内容によっては審査で認められない場合があります。以下の点に注意して書類をピックアップしてください。
ポイント1:請求金額と入金額の完全な一致
愛知県の審査では、請求書の金額と通帳の入金額が1円でも異なれば、同一の取引であるかどうかの確認を求められます。振込手数料などが差し引かれて入金されている場合は、提出する明細コピーに「差額●●●円は振込手数料」とメモ書きしておけばOKです。
ポイント2:工事内容が特定できること
請求書等の件名が、単に「修繕工事一式」や「改修工事」となっている場合は、どの業種の建設工事を行ったのかが特定できません。その場合は、具体的な工事内訳がわかる「見積書」等も併せてご準備いただく必要があります。
ポイント3:建設工事の「請負」であること
建設業の経営経験は「工事の完成を請け負った」経験でなければなりません。例えば、「人工出し(常用工事)」として人工代のみを請求しているものや、「材料の販売のみ」を行っているものは、建設工事の請負実績としては認められません。
ポイント4:通帳のコピーの取り方
通帳を証拠とする場合、該当する入金箇所がわかるページのコピーに加えて、「表紙」「裏表紙」「口座名義や支店名がわかる見開き1ページ目」のコピーも必要となります。ネットバンキングをご利用の場合は、入金が確認できる箇所の取引明細のPDF等で代用が可能です。
まとめ|行政書士のサポートで、着実な許可取得を
本記事では、比較的よくあるケースでの「経営業務の管理責任者」の経験証明について解説しました。この作業は、過去5年以上にわたる記録を、行政のルールに照らし合わせて整理していく地道な作業です。
- 「12ヶ月間隔が空いてしまいそうな期間がある」
- 「請求金額と通帳の入金額が合わない箇所があって困っている」
- 「昔の法人の目的欄が変更されていて、どう証明していいかわからない」
このようなお悩みを抱えたまま、ご自身だけで書類の山と格闘されるのは大変な負担となります。また、手引きを熟読したり行政書士に相談するとダメだと思っていたら実はあきらめなくてもよい別の方法が見つかることがあります。
当事務所では、オリジナルの「経験年数資料用マス」を活用しながら、事業者様の過去の実績を丁寧に洗い出します。不足している証明を補う方法や、金額のズレを説明するための代替資料の検討など、許可取得に向けた最適な道筋をご提案いたします。
「書類が揃うか不安」という段階でも構いません。初回相談は無料ですのでまずは一度、ご自身の現状をお気軽にご連絡ください。長年現場で積み上げてこられた大切な経験を、確実な「建設業許可」へと繋げるためのお手伝いをさせていただきます。
投稿者プロフィール

- (株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
- 自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。







