その契約書、本当に“使える状態”ですか?

「契約書を読めている」と「契約書を使えている」は別物

「契約書は、一通り目は通している」
「難しい条文があるのは分かっている」

多くの建設業者様が、そう感じています。しかし、実務上のトラブルを見ていると、問題は“読めていないこと”ではありません。

何を判断すべき契約書なのか分かっていない

この一点に、ほぼ集約されます。

契約書は、法律用語を理解するための文書ではなく、

  • いつ
  • 誰が
  • 止める(STOP=変更を求める)か/進める(GO=そのままでOK)か

を判断するためのツールです。今回は、契約書を「診断」するための超シンプルなチェックリストを紹介します。


3つ以上当てはまったら「危険ゾーン」(先出し)

以下のチェック項目に、

  • 3つ以上当てはまる場合
  • ✅ どれに当てはまるか即答できない場合

その契約書は、トラブル時に自社を守ってくれない、守るために使えない可能性が高いと考えてください。


自社用・簡易契約書チェックリスト【保存版】

チェック①

「契約変更」は、いつ・どうやって認められるかが書いてある

  • 変更工事
  • 設計変更
  • 仕様変更

について、

  • 書面が必要か
  • 誰の承認か
  • 工期・金額はどうなるか

✅ YES / ❌ NO

チェック②

資材高騰・価格変動時の“その後の動き方”が決まっている

  • スライド条項がある
  • 価格変動時に協議できる
  • その根拠資料・タイミングが分かる

「協議することがある」という曖昧表現だけになっていないか。

✅ YES / ❌ NO

チェック③

工期が延びた場合の「費用負担」が整理されている

  • 天候
  • 資材納期
  • 他工事との干渉

工期が延びたとき、

その間の人件費・現場経費は誰が負担するか

が書かれていますか。

✅ YES / ❌ NO

チェック④

「特約」がどこを書き換えているか把握している

七会約款・標準約款を使っていても、

  • 特約で上書き
  • 受注者に一方的負担

になっているケースは少なくありません。

「特約は補足」と思っていたら要注意です。

✅ YES / ❌ NO

チェック⑤

第三者損害・求償・保険の関係が理解できる

  • 事故時の最終負担者
  • 元請からの求償
  • 保険でカバーされる範囲

が、一本線で説明できますか。

✅ YES / ❌ NO

チェック⑥

現場が「作業を止めていい条件」が契約とリンクしている

  • 追加金額が○円超
  • 工期影響が○日以上

この判断基準が、

契約内容と矛盾していない

状態になっていますか。

✅ YES / ❌ NO


判定|「3つ以上」当てはまったら何が起きるか

3つ以上 ❌ がある場合、その契約書は

  • トラブルに初めて読み返される
  • 争点になってから意味を失う
  • 結果的に「受注者が受け入れる」前提になる

可能性が高くなります。特に危険なのは、

❌ どれに当てはまるか
❌ 社内で誰も即答できない

この状態です。それはつまり、判断を現場の勢いと空気に任せているということだからです。


「自社で見るべきライン」と「専門家の目を通すべきライン」

自社で十分対応できるライン

  • 契約書の構成が理解できる
  • チェック項目に理由付きで YES / NO をつけられる
  • 社内で運用ルールに落とせる

この状態なら、契約は “管理できている” と言えるかと思います。

専門家に診てもらったほうがいいライン

次のどれかに該当したら、第三者である専門家の視点を入れたほうが安全です。

  • 条文は読めるが、影響範囲が分からない
  • 特約の意味を説明できない
  • 今まで赤字・未回収を経験している
  • 現場での作業を止めることができず、事後協議が常態化している

これは能力の問題ではなく、役割分担の問題です。


まとめ|契約書は「知識」より「判断基準」

契約書を守るのは、法的知識ではありません。

  • どこで止まるか
  • どこまで飲まないか
  • 誰が判断するか

この判断基準を持っているかどうかです。もし今回のチェックで、

「ちょっと不安かも」

と感じたなら、それは既に 点検すべきサインです。

※当事務所では、建設業者様向けに「実務で使えるか」という観点に絞った契約書診断を行っています。

法律論の正誤ではなく、

・実際に事故が起きたらどうなるか
・社内運用と噛み合っているか

を整理する内容です。

「一度、今の契約書や発注者からの約款内容を棚卸して、何が起こるのかを理解しておきしたい」

という事業者様はぜひご検討ください。

投稿者プロフィール

古井 竜文(たつのり)
古井 竜文(たつのり)(株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。