
はじめに
建設業を営む個人事業主の方が、事業の拡大や信用力向上を目的に法人化を検討するケースは少なくありません。
しかし、すでに建設業許可を取得している場合、「法人化すると許可はどうなるのか?」「再取得が必要なのか?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、個人事業主が法人化する際の建設業許可の取り扱いについて、2020年に導入された「承継制度」を中心に、手続きの流れや注意点をわかりやすく解説します。
建設業許可の承継制度とは?
2020年10月の建設業法改正により、「建設業許可の承継制度」が導入されました。
この制度により、一定の要件を満たせば、個人事業主が取得した建設業許可を法人に引き継ぐことが可能となりました。
従来との違い
| 項目 | 改正前 | 改正後(承継制度導入後) |
|---|---|---|
| 許可の扱い | 法人化と同時に失効 | 承継手続きで法人に引継ぎ可能 |
| 許可番号 | 新規取得で新番号 | 既存の許可番号を継続使用可能 |
| 有効期限 | 新たに5年間 | 個人許可の残存期間を継続利用可能 |
| 無許可期間 | 一時的に発生 | 無許可期間なしで営業継続可能 |
承継制度のメリット
- 許可番号の継続:既存の許可番号をそのまま使用できる
- 営業の継続性:無許可期間を作らずに法人化できる
- 費用の削減:新規申請手数料(9万円)が不要
- 経審の継続:経営事項審査の点数や履歴を引き継げる
承継制度の基本要件
承継制度を利用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 経営業務管理責任者(経管)・専任技術者(専技)の継続配置
法人化後も、個人事業主時代と同様に要件を満たす人物が必要です。 - 事業の実質的承継があること
名義変更だけではなく、実際に事業内容や取引先、従業員などが継続している必要があります。 - 承継手続きの期限内申請
法人設立の効力発生日の前日までに、承継申請を完了しておく必要があります。
承継制度が使えないケース
以下のような場合は、承継制度を利用できず、法人として新規に建設業許可を取得する必要があります。
- 経管・専技の要件を法人側で満たせない
- 事業の実質的承継が認められない
- 許可業種を変更・追加したい場合
承継制度と新規申請の比較
| 比較項目 | 承継制度 | 新規申請 |
|---|---|---|
| 手数料 | 無料 | 約9万円 |
| 許可番号 | 継続使用 | 新番号発行 |
| 有効期限 | 事業承継日から5年間 | 新たな許可日から5年間 |
| 経審履歴 | 継続可能 | リセットされる |
法人化のメリットとデメリット
メリット
- 信用力の向上:法人登記により、元請や金融機関からの信頼度が高まる
- 節税効果:法人税率の方が所得税より低く、経費計上の幅も広がる
- 資金調達力の強化:法人名義での融資が受けやすくなる
- 事業承継の円滑化:株式譲渡によるスムーズな経営権移行が可能
デメリット
- 設立・維持費用がかかる:設立費用約30万円、年間維持費10万円以上(株式会社の場合)
- 社会保険加入義務:法人は従業員数に関係なく加入が必要
- 事務負担の増加:法人税申告や社会保険手続きが必要
法人化の適切なタイミング
以下のような状況になったら、法人化を検討するのが望ましいです。
- 年商が1,000万円を超えた
- 常時雇用する従業員が増えた
- 元請案件や公共工事の受注が増えた
- 後継者への事業承継を考えている
- 設備投資や融資を検討している
手続き上の注意点
承継制度を活用する際には、以下の点に注意しましょう。
- 期限管理:法人設立の前に承継申請を完了する必要あり
- 書類不備の防止:必要書類は多岐にわたるため、事前準備が重要
- 要件確認:経管・専技の要件を法人側で満たしているか確認
- 変更届の提出:法人化後の役員変更や営業所変更なども忘れずに
専門家のサポートを活用しよう
建設業許可の承継手続きは、専門的な知識と正確な書類作成が求められます。
行政書士などの専門家に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 要件判定の正確性
- 手続きの戦略的選択(承継 vs 新規)
- 書類作成の効率化
- トラブル回避
- 法人化後の継続的なサポート
まとめ
個人事業主が法人化する際、建設業許可をどう扱うかは非常に重要なポイントです。
2020年に導入された「承継制度」を活用すれば、許可番号や営業履歴を維持したまま、スムーズに法人化することが可能です。
ただし、制度の利用には厳格な要件と期限があるため、事前の準備と専門家の支援が不可欠です。
事業の成長と安定のためにも、計画的な法人化と許可承継を進めましょう。法人化に関しては当事務所は税理士法人とも提携しておりますのでワンストップで手続対応が可能です。
法人化についてご不明な点、心配なことがありましたらお気軽にご連絡ください。初回のご相談は無料で対応しております。
【ご注意】当ホームページの内容は、建設業許可に関する一般的な情報を提供するものであり、個別具体的な案件に対する法的判断を示すものではありません。実際の許可要否や手続きについては、必ず所轄行政庁に確認するか、当事務所までお問い合わせください。
投稿者プロフィール

- (株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
- 自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。







