「ついでに建設業許可を取る」ときに無駄な工数と費用かけないように

1.はじめに|電気工事業で「法人化+建設業許可同時取得」を考えた事業者様へ

個人事業主として登録電気工事業の登録を行い、これまで問題なく電気工事を請け負ってきた。最近は元請から「法人じゃないと発注できない」と言われることも増え、そろそろ法人化を検討している。ついでに、

  • 税込500万円以上の工事も増えてきた
  • 建設業許可もあった方がよさそう(元請からもそれとなく言われることが多くなった)
  • せっかくだから法人設立のタイミングで一緒に取ってしまおう

このように考えている方は多いと思います。しかし、この進め方を“深く考えずに”行うと、思わぬ手続きミスや営業停止リスクを抱えることになるケースが少なくありません。

この記事では、「登録電気工事業の個人事業主が、法人化にあわせて建設業許可を取得する場合」に特化して、

  • 手続き全体の流れ
  • 勘違いしやすいポイント
  • 実務上よくある落とし穴

を工作機械商社の管理部門出身の行政書士が解説します。


2.まず大前提|「登録電気工事業」と「建設業許可」は別モノ

最初に押さえておくべき大前提があります。

登録電気工事業(経済産業省管轄)

電気工事業法に基づく制度
→ 金額に関係なく、一定の電気工事を行うために必要

電気工事業の建設業許可(国土交通省管轄)

建設業法に基づく制度
→ 原則「1件で税込500万円以上(電気工事の場合は税込)」の工事を請け負うために必要

この2つは、「いわゆる”電気工事業”に関連しており、似ているけど別の制度」です。

そのため、

  • 登録電気工事業がある=建設業許可は不要
  • 建設業許可を取った=電気工事業の登録が自動で変わる

というわけではありません。この違いを曖昧にしたまま法人化を進めると、後日あわただしく追加手続きをしなければならなくなります。


3.個人事業主から法人化すると「今の登録・許可」は何もしないと引き継げない

ここが最初に注意するポイントです。

個人事業主と法人は「法律上、別の事業者」

たとえ、

  • 代表者が同じ
  • 実際の工事内容が同じ
  • 従業員も変わらない

と外から見て実態が変わらないとしても、個人の登録・許可は、法人に自動的に引き継がれません。これは登録電気工事業も建設業許可も同様です。つまり、

  1. 個人で「登録電気工事業」を持っている
  2. 法人を設立した
  3. 設立後は法人名義で工事を続ける

無登録・無許可営業になってしまいます。


4.【全体像】法人化+建設業許可取得の正しい手順

ここで、一番無駄が無くスムーズな流れを説明します。

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本記事の説明は法人化を先にする「法人設立→登録電気工事業の事業承継→建設業許可申請・取得→みなし登録電気工事業届出」の順番にしています。別のやり方として建設業許可を先に取得する「(個人事業での)建設業許可申請・取得→(個人の)みなし登録電気工事業届出→法人設立→建設業許可の事業承継→みなし登録電気工事業の事業承継」のパターンもありますが、提出書類が多くなり手続きも煩雑になるため、おすすめしません。

ステップ① 法人設立(会社設立登記)

  • 商号(会社名)
  • 本店所在地
  • 事業目的(※ここ重要)
  • 資本金
  • 役員構成

この段階で事業目的に「電気工事業」が入っていないと、後で登記の修正が必要になることもあります。

ステップ② 法人への登録電気工事業の承継・変更手続き

個人事業主として登録電気工事業の登録を受けていた場合、法人化にあたり 「一度廃止して新規登録し直す」必要はありません。

愛知県もですが、個人から法人への法人化(いわゆる法人なり)は事業譲渡による承継」として扱われ、登録電気工事業者の地位を法人へ引き継ぐことが可能とされています。この場合、

  • 新規登録ではなく
  • 現在の登録をベースに
  • 承継と名称変更(例:○○電気設備→株式会社○○電気設備)の届出を行う

という形になります。手続きは、承継の日から30日以内に「登録電気工事業者承継届出書」等を提出する流れです。

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これで法人として電気工事ができるようになります。当然ですが、この段階では税込500万円未満の電気工事しかできません。

ステップ③ 法人として電気工事業の建設業許可を新規申請

法人化した場合、建設業許可の方は新規申請です。ちなみに、主な要件は以下のとおりです。

  • 経営業務の管理責任者(法人での立場が重要)
  • 専任技術者(電気工事士等)
  • 財産的基礎(資本金500万円 or 500万円以上の自己資金証明)
  • 社会保険加入(該当する場合)

実務経験等については個人事業主時代の注文書や請求書、入金履歴(通帳コピー等)で証明します。ご自身で手続きをされる場合はここでつまずく方が非常に多いです。

ステップ④ 登録電気工事業 → みなし登録への切替

電気工事業の建設業許可を取得すると、ステップ②で法人に承継した電気工事業の扱いが「登録」から「みなし登録」に変わります。そのため、

  1. 法人の登録電気工事業の「廃止届」
  2. 法人のみなし登録電気工事業の「届出」

を行う必要があります。

ここを忘れると、「建設業許可(国交省管轄)はあるのに、電気工事業法(経産省管轄)違反」という状態になってしまいます。

Info

実務的にはオレンジ色の「登録電気工事業者登録証」を返納し、うすい青色の「建設業者として行う電気工事業の届出受理証」が代わりに交付されます。


5.よくある“ついやってしまう”NGパターン

NG① とりあえず会社を作ってから考える

→ 登記内容が許可要件を満たさず、やり直し
→ 事業目的の記載漏れ、資本金不足など

NG② 個人の登録があるから当面は大丈夫と思う

→ 法人名義での請負=無登録 ←同業他社の通報で発覚します
→ 元請・監督官庁から指摘されるケースも

NG③ 建設業許可だけ取ればOKと勘違い

→ 電気工事業(経産省管轄)の「みなし登録」を忘れる
→ 標識掲示義務を失念 ※:建設業許可のいわゆる金看板とは別で必要


6.「ついでに取る建設業許可」で注意が必要な理由

法人化をする手続き中は、税務・社会保険・銀行口座・契約関係など、一気に手続きが集中します。その中で建設業許可を、

  • ついで
  • あとから
  • 形式的に

扱うとうっかりとはいえ、

✔ 実は要件を満たしていなかった
✔ 虚偽記載と疑われる
✔ 許可取消・指示処分のリスク

につながりかねません。建設業許可は、取ること以上に「管理、維持する責任」が重い制度です。


7.まとめ

特に次のような方は、法人設立前の段階で一度、建設業許可に詳しい行政書士に相談することを強くおすすめします。

  • 実務経験の証明が微妙
  • 資本金を500万円未満にしようとしている
  • 電気工事以外の工事も将来的にやりたい
  • 元請から許可の有無を厳しく見られている

登録電気工事業の個人事業主が法人化し、そのタイミングで建設業許可を取得を検討すること自体は、珍しいことではありません。しかし、

  • 個人と法人は別
  • 許可と登録は別
  • 手続きの順序をまちがえると工数が増える

この3点を甘く見ると、あとで面倒な修正が発生します。

「まだ具体的に決めていない」
「何から手を付ければいいかわからない」

その段階での相談こそ、実は一番手間もコストもかかりませんので早めの相談をお勧めします。

投稿者プロフィール

古井 竜文(たつのり)
古井 竜文(たつのり)(株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。