「うちの会社も、そろそろ建設業許可を取った方がいいんじゃないか」
「元請さんから許可の有無を聞かれた」
「500万円以上の工事を受ける可能性が出てきた」
「公共工事や大きめの民間工事にも入っていきたい」
「外国人を採用するためには建設業許可が必要らしい」

このような理由で、社長や上司から突然、

「建設業許可って自社で取れるのか、ちょっと調べておいて」

と言われた事務担当者の方も多いのではないでしょうか。建設業許可は、建設会社や設備工事会社にとって重要な許可です。
一方で、初めて調べる方にとっては、制度の言葉が難しく、必要書類も多く、何から確認すればよいのか分かりにくい手続きでもあります。

特に愛知県で建設業許可を取得する場合、愛知県の手引きや様式に沿って申請書類を準備する必要があります。しかしながら愛知県のホームページから入手できる建設業許可申請の手引きや申請書様式は初めて見る事業者様にとってはあらゆるパターンをすべて網羅しているためかえって混乱してしまうのではないでしょうか。

この記事では、愛知県知事許可で新規に建設業許可を取得したい中小建設会社・設備工事会社の事務担当者に向けて、工作機械専門商社(建設業許可保有)の管理部門出身の行政書士が次の内容をわかりやすく整理します。

  • 建設業許可の手続き概要
  • まず社内で確認すべきこと
  • 新規申請で必要になる主な書類
  • 申請までの流れ
  • 費用と期間の目安
  • よくある失敗・つまずきポイント
  • 社長や上司に報告するときのポイント

なお、本記事は、機械器具設置工事、管工事、電気工事、とび・土工工事などの設備系工事を主なイメージとして書いています。
土木、建築、内装、塗装、防水、解体など、その他の業種で建設業許可を検討している会社でも、基本的な確認の流れは共通しますのでぜひ参考にしてみてください。

まず確認:建設業許可はどんなときに必要になるのか

建設業を営む場合、原則として建設業許可が必要です。
ただし、すべての工事で必ず許可が必要というわけではなく、一定規模以下の「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、建設業許可を受けなくてもよいとされています。

建築一式工事以外の工事については、1件の請負代金が税込500万円未満の工事が軽微な建設工事とされています。
また、建築一式工事については、1件の請負代金が税込1,500万円未満の工事、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事が軽微な建設工事とされています。

設備工事会社の場合、たとえば次のような場合に建設業許可の取得を検討し始めることが多いです。

  • 工場設備の据付工事で、税込500万円以上の工事を請け負う可能性がある
  • 配管工事や電気工事の受注金額が大きくなってきた
  • 元請会社や取引先から「建設業許可はありますか」と確認される
  • 今後、公共工事や大手企業の案件に参加したい
  • いよいよ外国人の雇用検討が避けられなくなってきた
  • 見積書や契約書の金額が大きくなり、無許可でよいのか不安が出てきた
  • 会社の信用力を高めるために許可を取得したい

ここで事務担当者の方が最初に押さえておきたいのは、建設業許可は単なる届出ではなく、一定の要件を満たしていることを確認されたうえで取得する許可だという点です。

要するに「申請書を書いて出せば取れる」というものではありません
役員の経営経験、技術者の資格や実務経験、財産的基礎、社会保険の加入状況、営業所の実態など、複数の要件をクリアする必要があります。

愛知県知事許可とは?大臣許可との違い

建設業許可には、国土交通大臣許可都道府県知事許可があります。
これは、工事をする場所で決まるのではなく、建設業の営業所をどこに置くかで決まります。2つ以上の都道府県に営業所を設ける場合は大臣許可を、1つの都道府県内のみに営業所を設ける場合は知事許可を取得することになります。

たとえば、愛知県内のみに建設業の営業所がある会社であれば、基本的には愛知県知事許可を検討することになります。
一方、愛知県と岐阜県、愛知県と大阪府など、複数の都道府県に建設業の営業所がある場合は、国土交通大臣許可が関係する可能性があります。

ここでよく誤解されるのが、

愛知県知事許可だと、愛知県内の工事しかできないのでは?

という点です。知事許可か大臣許可かは、営業所の所在地による区分であり、施工できる地域を制限するものではありません。つまり、愛知県知事許可の業者であっても、条件を満たしていれば他県で工事を行うこと自体は可能です。
ただし、契約を締結する営業所の考え方や、他県に実質的な営業所がある場合の扱い、現場に所定の要件を満たした技術者を配置できるかどうかには注意が必要です。

「一般建設業」と「特定建設業」の違い

建設業許可には、一般建設業許可特定建設業許可があります。

初めて建設業許可を取得する中小建設会社・設備工事会社では、まずは一般建設業許可を検討するケースが多いです。

特定建設業許可は、発注者から直接請け負った工事について、一定金額以上の下請契約を締結する場合に必要となる許可です。令和7年2月1日以降、建築工事業以外では5,000万円以上、建築工事業では8,000万円以上となる下請契約を締結する場合に特定建設業許可が必要と説明しています。

一方で、下請として工事を行う場合や、元請であっても下請に出す金額がこの基準に達しない場合は、一般建設業許可で足りるケースが多くなります。

ただし、実際には会社の受注形態、元請・下請の立場、協力会社への発注金額、今後の事業計画によって判断が変わることがあります。

社長や上司に報告するときは、次のように整理するとよいでしょう。

当社がまず検討するのは、一般建設業許可でよさそうです。
ただし、元請として大きな工事を受け、多額の下請発注をする予定がある場合は、特定建設業許可の要否も確認が必要です。

建設業許可は業種ごとに取得する

建設業許可は、会社単位で一括して「建設業全部の業種」の許可を取るものではありません。
建設業の許可は、建設工事の種類ごとに行われます。建設業は、土木一式工事・建築一式工事の2つの一式工事と、27の専門工事を合わせた29業種に分類されています。

設備系の会社でよく検討される業種としては、たとえば次のようなものがあります。

  • 機械器具設置工事業
  • 管工事業
  • 電気工事業
  • とび・土工工事業
  • 鋼構造物工事業
  • 消防施設工事業
  • 電気通信工事業

ただし、実際にどの業種を取るべきかは、注文書の記載内容ではなく会社が請け負っている工事の内容(実態)によって判断します。たとえば、工場内の設備工事でも、

  • 機械設備の据付なのか
  • 配管工事なのか
  • 電気配線工事なのか
  • 重量物の搬入・据付に伴う工事なのか
  • 架台や鋼構造物の工事を含むのか

によって、検討すべき業種が変わることがあります。ここは、建設業許可で非常につまずきやすいポイントです。社長から「建設業許可を取ろう」と言われたとき、事務担当者の方は、すぐに申請書を書き始めるのではなく、まず次のように確認するとよいでしょう。

当社が取りたい許可業種は何か。
その業種は、実際に当社が請け負っている工事内容と合っているか。
その業種について、技術者等になれる人が社内にいるか。

この「業種選び」を間違えると、せっかく許可を取っても、実際に必要な工事を受注できません

建設業許可を取るために確認すべき主な要件

建設業許可を取得するには、複数の要件を満たす必要があります。ここでは、事務担当者の方が最初に確認すべきポイントに絞って説明します。

1. 経営業務の管理を適正に行う能力があるか

建設業許可では、会社に建設業の経営経験を持つ人がいるかを求めています。
以前は「経営業務の管理責任者」、いわゆる「経管(ケーカン)」と呼ばれる要件として知られていた部分です。

現在も、建設業の経営を適正に行うため、常勤役員等のうち一定の経験を持つ者がいることなどが求められます。中小建設会社の場合、社長自身がこの要件の候補者になるケースが多いです。

事務担当者としては、まず次の点を確認します。

  • 社長や役員に、建設業の経営経験があるか
  • その経験年数はどのくらいか(原則5年以上必要)
  • 以前から法人の役員だったか
  • 個人事業主として建設業を営んでいた期間があるか
  • その経験を証明できる資料が残っているか

ここで重要なのは、経験があることを口頭で説明するだけでは足りないという点です。許可申請では、必要に応じて、過去の契約書、注文書、請求書、確定申告書、登記事項証明書など、経験を裏付ける資料を確認することになります。

社長が「昔から建設業をやっているから大丈夫」と言っていても、それを資料で証明できるかどうかは別問題です。

2. 営業所技術者等になれる人がいるか

建設業許可では、営業所ごとに、許可を受けようとする業種に対応した営業所技術者等を置く必要があります。以前は「専任技術者」と呼ばれていたため、今でも社内や実務上では「専技(センギ)」と呼ばれることがあります。

営業所技術者等になるためには、主に次のようなルートがあります。

  • 該当業種に対応する国家資格を持っている
  • 指定学科を卒業し、一定年数の実務経験がある
  • 10年以上など、一定期間の実務経験がある

設備系工事では、資格と業種の対応関係が特に重要です。

たとえば、電気工事、管工事、機械器具設置工事、とび・土工工事などでは、それぞれ必要となる資格や実務経験の考え方が異なります。
「技術者がいる」だけではなく、取りたい業種に対応する技術者かどうかを確認する必要があります。

事務担当者としては、次の点を確認しましょう。

  • 取りたい業種は何か
  • その業種に対応できる資格者が社内にいるか
  • 資格者は常勤しているか
  • その人は他社の営業所技術者等になっていないか
  • 資格で足りない場合、実務経験で証明できるか
  • 実務経験を証明する資料が残っているか

ここも、建設業許可の新規申請で非常につまずきやすいポイントです。

特に10年実務経験で証明する場合、過去の工事内容、工事期間、請負契約の内容などを資料で確認する必要があり、書類の準備に時間がかかることがあります。

3. 財産的基礎があるか

一般建設業許可では、会社に一定の財産的基礎(十分な資金があるか)があることも求められます。
一般的には、自己資本が500万円以上あるか、500万円以上の資金調達能力があるか、といった点を確認します。

事務担当者としては、まず直近の決算書を確認し、純資産(「資産の部」の金額から「負債の部」の金額を引いた金額)の額が500万円以上あるかを見ておくとよいでしょう。

ただし、財務諸表のどこを見ればよいのか、資本金と自己資本の違い、債務超過の場合の対応などは、初めての方には分かりにくい部分です。社長に報告するときは、次のように整理するとよいでしょう。

建設業許可では、財産的基礎の確認があります。
直近決算書で自己資本が500万円以上あるか、または500万円以上の預金残高証明書を提出できるか確認する必要があります。

4. 社会保険に適切に加入しているか

建設業許可では、社会保険への加入状況も確認されます。確認すべき主な項目は次のとおりです。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険

法人の場合、多くのケースで健康保険・厚生年金保険の加入が必要になります。また、従業員を雇用している場合は、雇用保険の加入も確認事項になります。

建設業許可の申請準備を始めてから、社会保険関係の手続きが未整備だったことに気付くケースもあります。この場合、許可申請の前に社会保険労務士や年金事務所、ハローワーク等への確認が必要になることもあります。

5. 欠格要件に該当しないか

建設業許可では、役員等が一定の欠格要件(反社会勢力でないか、重大な犯罪を犯していないか)に該当しないことも必要です。細かい内容は個別確認が必要ですが、たとえば過去の処分歴、一定の刑罰、破産手続きとの関係などが問題になることがあります。

事務担当者が社内で確認する場合は、いきなり細かい法律要件を判断しようとするよりも、

  • 役員全員を確認対象にする必要がある
  • 申請時には誓約書などが必要になる
  • 気になる事情がある場合は事前に専門家へ確認する

というレベルで整理しておくとよいでしょう。

愛知県知事許可の新規申請で必要になる主な書類

建設業許可申請では、多くの書類を準備する必要があります。
愛知県では、建設業許可申請の手引きや様式が公式サイトで公開されており、新規申請、業種追加、更新などに応じた申請書類を確認できます。

ここでは、初めて新規申請を検討する事務担当者向けに、必要になることが多い主な書類を大きく分類して説明します。

1. 申請書本体・様式関係

まず、建設業許可申請書や役員一覧、営業所一覧、営業所技術者等一覧など、所定の様式を作成します。愛知県のホームページでは、法人新規等の申請書類一式や個別様式がダウンロードできるようになっています。

主な様式としては、次のようなものがあります。

  • 建設業許可申請書
  • 役員等の一覧表
  • 営業所一覧表
  • 営業所技術者等一覧表
  • 工事経歴書
  • 直前3年の各事業年度における工事施工金額
  • 使用人数
  • 誓約書
  • 常勤役員等に関する証明書
  • 営業所技術者等に関する証明書
  • 建設業財務諸表

これらは単に空欄を埋めるだけではなく、会社の決算書、工事実績、役員情報、技術者情報と整合している必要があります。

2. 会社に関する書類

法人で申請する場合、会社の基本情報を確認する書類が必要になります。代表的なものは次のとおりです。

  • 履歴事項全部証明書
  • 定款
  • 直近の決算書
  • 事業税等に関する納税証明書
  • 営業所の写真

会社の登記上の目的に、建設業に関する事業目的が入っているかも確認しておきます。設備工事会社や機械商社の場合、会社の目的に「機械器具の販売」「設備工事」「電気工事」「管工事」などが入っていることもありますが、古い会社では現在の実態と目的が合っていない場合もあります。

3. 経営業務の管理を確認する書類

経営業務の管理を適正に行う能力があることを確認するため、常勤役員等の経験を証明する書類を準備します。たとえば、次のような資料が関係することがあります。

  • 登記事項証明書(商業登記簿)
  • 役員としての在任期間が分かる資料
  • 過去の工事請負契約書
  • 注文書・請書
  • 請求書
  • 確定申告書
  • 工事台帳
  • 許可通知書や過去の建設業許可関係資料

ここでのポイントは、経験年数そのものよりも、それを証明できる資料が残っているかです。社長が長年建設業をしていても、過去の契約書や注文書が整理されていない場合、証明に苦労することがあります。最悪の場合はまた5年待たなくてはいけなくなることもあり得ます。

4. 営業所技術者等(専技)を確認する書類

営業所技術者等については、資格または実務経験を確認する資料を準備します。

資格で証明する場合は、資格証、合格証明書、免状などが必要になります。実務経験で証明する場合は、過去の工事内容や期間を確認できる書類が必要になります。たとえば、次のような資料が関係します。

  • 資格証
  • 資格の合格証
  • 免状
  • 卒業証明書
  • 実務経験証明書
  • 過去の工事契約書
  • 注文書・請書
  • 請求書
  • 工事台帳
  • 在籍期間を確認する資料
  • 常勤性を確認する資料

設備系では、技術者の資格がどの業種に対応するのかが重要です。

「電気工事士がいるから機械器具設置工事も大丈夫」
「管工事施工管理技士がいるから電気工事も大丈夫」
というように、資格と業種の対応を大まかに判断すると危険です。取得したい業種ごとに、営業所技術者等の要件を確認する必要があります。

5. 財産的基礎を確認する書類

財産的基礎の確認では、主に直近の決算書や残高証明書などが関係します。

事務担当者としては、まず経理担当者や税理士に次の資料を確認しましょう。

  • 直近の決算書
  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表
  • 勘定科目内訳書
  • 必要に応じて預金残高証明書

決算書を見慣れていない担当者にとっては、「自己資本」「純資産」「資本金」「利益剰余金」などの言葉が分かりにくいかもしれません。その場合は、無理に自分だけで判断せず、税理士や行政書士に確認した方が安全です。

6. 社会保険関係の書類

社会保険の加入状況を確認するため、健康保険、厚生年金保険、雇用保険に関する資料を準備します。たとえば、次のようなものが関係します。

  • 健康保険・厚生年金保険の加入状況が分かる資料
  • 雇用保険の加入状況が分かる資料
  • 保険料の納入を確認できる資料
  • 事業所整理記号等が分かる資料

なお、健康保険被保険者証が無くなったことにより常勤性の確認書類に変更がありました。
常勤性の確認方法は制度変更の影響を受けることがあるため、最新の手引きや案内を確認することが重要です。

建設業許可を自社で取る場合の手続きの流れ

ここからは、社長や上司から「自社で取れるか調べて」と言われた事務担当者向けに、実際の流れを整理します。

許可が必要な状況かを整理する

まず、今の状況が建設業許可を取るべき(取らないといけない)状況なのかを整理します。

  • 税込500万円以上の工事を受注する予定があるのか
  • 取引先から許可取得を求められているのか
  • 公共工事に参入したいのか
  • 元請として大きな工事を受けたいのか
  • 外国人を採用したいのか
  • 会社の信用力向上が目的なのか
  • 今後、許可業者として営業したいのか

理由によって、急ぎ度や必要な業種が変わります。社長に確認するときは、次のように聞くとよいです。

今回、建設業許可を検討する一番の理由は何ですか?
金額の大きい案件がすでに具体的にあるのか、将来の会社の成長に向けた準備なのかを確認したいです。

STEP
1

取りたい業種を確認する

次に、どの業種の許可を取るべきかを確認します。

設備系であれば、機械器具設置工事、管工事、電気工事、とび・土工工事などが候補になることがあります。ただし、工事内容によっては別の業種が適切な場合もあります。社内で確認すべきことは次のとおりです。

  • 過去に請け負った主な工事内容
  • 今後受注したい工事内容
  • 見積書や契約書の工事項目
  • 元請から求められている許可業種
  • 技術者の資格・経験と対応する業種

ここで「なんとなくこの業種だろう」と感覚で決めると建設業許可を取得したのに施工できないという事態に陥りかねません。必ず手引き等で確認しましょう。

STEP
2

社長・役員の経営経験を確認する

次に、常勤役員等の要件を確認します。特に中小規模の企業では、社長が候補者になることが多いため、次の点を確認しましょう。

  • 社長はいつから建設業を営んでいるか
  • 法人設立前に個人事業として建設業をしていた期間があるか
  • 法人の役員になった時期はいつか
  • 過去の工事契約書や注文書は残っているか
  • 建設業の売上が確認できる決算書や申告書はあるか

事務担当者だけでは判断しにくい場合がありますので、まずは資料の有無を確認するところから始めることをおすすめします。

STEP
3

営業所技術者等の候補者を確認する

次に、営業所技術者等(旧:専技)になれる人がいるかを確認します。確認すべきことは次のとおりです。

  • 社内に資格者がいるか
  • 資格は取りたい業種に対応しているか
  • その人は常勤しているか
  • 他社の技術者になっていないか
  • 実務経験で証明する場合、必要年数を満たすか
  • 工事実績を証明する資料が残っているか

設備工事会社の場合、現場経験の長い方がいても、証明が難しいことがあります。特に、昔の工事資料が残っていない場合や、口頭・メール・簡易な注文だけで仕事を受けていた場合は、証明資料の整理に時間がかかる可能性があります。

STEP
4

決算書・財産的基礎を確認する

次に、直近の決算書を確認します。一般建設業許可では、財産的基礎として500万円以上の自己資本などが問題になります。確認すべきことは次のとおりです。

  • 純資産の額はいくらか
  • 債務超過になっていないか
  • 必要に応じて金融機関の残高証明書(500万円以上)を準備できるか

社長に報告するときは、決算書のコピーを見ながら、

財産的基礎については、直近決算書の純資産額を確認する必要があります。
判断が難しい場合は、税理士または行政書士に確認した方がよいです。

と説明するとよいでしょう。

STEP
5

必要書類を集める

要件の見込みが立ったらこの段階で初めて必要書類を集めます。ここで大切なのは、最初から完璧な書類を集めようとしないことです。まずは、次の分類で社内にある資料を確認しましょう。

  • 会社関係の資料
  • 役員関係の資料
  • 決算書・税務関係資料
  • 工事契約関係資料
  • 技術者の資格証
  • 社会保険関係資料
  • 営業所関係資料

建設業許可の書類収集では、社長、経理担当者、現場責任者、技術者、税理士など、複数の関係者に確認することになります。事務担当者が一人で抱え込むよりも、最初に「誰から何を集めるか」を整理することが重要です。

STEP
6

申請書を作成する

必要資料をもとに、申請書類を作成します。愛知県では、ホームページで建設業許可申請の手引きや様式ダウンロードページで、申請書類や記載例を確認できます。申請書作成で注意したいのは、各書類の内容や数字がバラバラにならないようにすることです。たとえば、

  • 工事経歴書の内容
  • 直前3年の工事施工金額
  • 決算書の売上
  • 取得したい業種
  • 技術者の実務経験
  • 常勤役員等の経験

これらの整合性に注意する必要があります。また、単に様式に入力するだけではなく、会社の実態に合った内容になっているかを確認することも重要です

STEP
7

愛知県の担当窓口へ申請する

申請書類が整ったら、愛知県または管轄の建設事務所へ申請します。

【ご参考】管轄窓口の一覧はこちらでご確認ください(右のVをクリックしてください)

主たる営業所の所在地 所管する窓口
名古屋市の区域 都市・交通局都市基盤部都市総務課
建設業・不動産業室 建設業第二グループ

〒460-8501
名古屋市中区三の丸3-1-2
(自治センター2階)
瀬戸市、春日井市、小牧市、尾張旭市、豊明市、日進市、清須市、北名古屋市、長久手市、愛知郡及び西春日井郡の区域 尾張建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒460-0001
名古屋市中区三の丸2-6-1
(三の丸庁舎5階)
一宮市、犬山市、江南市、稲沢市、岩倉市及び丹羽郡の区域 一宮建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒491-0053
一宮市今伊勢町本神戸字立切1-4
津島市、愛西市、弥富市、あま市及び海部郡の区域 海部建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒496-8533
津島市西柳原町1-14
(海部総合庁舎6階)
半田市、常滑市、東海市、大府市、知多市及び知多郡の区域 知多建設事務所総務課 総務・建設業グループ
〒475-0828
半田市瑞穂町2-2-1
岡崎市、西尾市及び額田郡の区域 西三河建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒444-0860
岡崎市明大寺本町1-4
(西三河総合庁舎6階)
碧南市、刈谷市、安城市、知立市及び高浜市の区域 知立建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒472-0026
知立市上重原町蔵福寺124
豊田市及びみよし市の区域 豊田加茂建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒471-0867
豊田市常盤町3-28
新城市及び北設楽郡の区域 新城設楽建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒441-1354
新城市片山字西野畑532-1
豊橋市、豊川市、蒲郡市及び田原市の区域 東三河建設事務所 総務課 総務・建設業グループ
〒440-0801
豊橋市今橋町6

愛知県のホームページでは郵送、投函、窓口での仮受付などの方法も案内されています。また、申請時に提出票を添付する案内も掲載されています。申請方法や受付方法、必要書類は変更されることがあるため、実際に申請する際は、必ず最新の案内を確認してください。

STEP
8

審査・補正対応

申請後は、担当窓口での書類審査が行われます。審査の中で、不足書類や確認事項があれば、補正(修正)対応が必要になることがあります。補正対応でよくあるのは、次のようなものです。

  • 工事内容の詳細説明を求められる
  • 経験確認資料の追加提出を求められる
  • 技術者の常勤性確認資料を求められる
  • 営業所写真の撮り直しが必要になる
  • 財務諸表の記載内容を確認される
  • 社会保険関係資料の追加確認が必要になる

ここで時間がかかると、許可取得の時期が遅れる可能性があります。

Warning

必要書類、特に各種証明書の多くは有効期限が発行日から3か月以内となっています。そのため、補正する箇所や事項が多いとその対応に日数がかかり各種証明書を再度の取得が必要になることもあります。

STEP
9

許可取得後の手続きも忘れない

建設業許可は、取って終わりではありません。建設業許可の有効期間は5年間であり、更新が必要です。

また、許可取得後も、毎事業年度終了後の届出や、役員・営業所・技術者などに変更があった場合の変更届が必要になります。そのため、社長に報告するときは、

建設業許可は取得して終わりではなく、毎年の届出や5年ごとの更新管理が必要です。

という点も伝えておくとよいでしょう。

STEP
10



費用と期間の目安

自社で申請する場合の費用

愛知県知事許可で新規申請を行う場合、県に納める申請手数料(通常は9万円)が必要です。また、登記事項証明書、納税証明書、身分証明書、登記されていないことの証明書など、各種証明書の取得費用も数千円程度ですが発生します。

自社で申請する場合、後述する行政書士報酬はかかりませんが、次のような社内コストが発生することは認識しておきましょう。

  • 事務担当者が制度を調べる時間
  • 必要書類を集める時間
  • 社長や技術者に確認する時間
  • 申請書を作成する時間
  • 役所や関係機関に確認する時間
  • 不備や補正に対応する時間

目に見える支出は少なくても、社内の作業時間はかなり大きくなることがあります。この作業が繁忙期に重なると残業しての対応になることもあるかもしれません。

行政書士に依頼する場合の費用

行政書士に依頼する場合は、行政庁に納める手数料に加えて、行政書士報酬が発生します。ただし、建設業許可の新規申請では、単に申請書を作るだけでなく、次のような確認も必要になります。

  • 許可要件を満たすか
  • どの業種を取るべきか
  • 経営経験をどう証明するか
  • 技術者要件をどう確認するか
  • 財産的基礎に問題がないか
  • 書類の不足や矛盾がないか
  • 許可後の届出管理をどうするか

そのため、費用だけで比較するのではなく、社内でどこまで対応できるか、どこからどこまでを専門家に任せるかを考えることが大切です。

Info

対応する範囲によりますが、愛知県の場合は10万円から18万円程度が行政書士報酬の相場感です。


期間の目安

建設業許可の取得までにかかる期間は、会社の状況によって大きく変わります。スムーズに進む場合でも、次のような期間を見込んでおくとよいでしょう。

  • 社内確認:1〜2週間
  • 必要書類の収集:2〜4週間
  • 申請書作成:1〜2週間
  • 申請後の審査:1か月前後から2か月(不備が無ければ)

特に時間がかかるのは、経営経験や技術者の実務経験を証明する資料の整理です。

「来月から税込500万円以上の工事を受けたい」

という段階で慌てて準備を始めると、間に合わない可能性があります。社長には、

建設業許可は、思い立ってすぐ取れるものではないみたいです。
必要書類の準備や審査期間を考えると、早めに準備を始める必要があります。

と伝えておくとよいでしょう。

建設業許可を自社で取ろうとするときのよくある失敗

ここからは、初めて建設業許可を自社で取ろうとする会社でよくある失敗を整理します。

失敗1:まず申請書をダウンロードしてしまう

よくあるのが、愛知県のサイトから申請書をダウンロードし、とりあえず入力を始めるケースです。

もちろん、様式を確認すること自体は悪くありません。
しかし、建設業許可では、申請書作成の前に、要件確認が必要です。

特に重要なのは、

  • 取りたい業種
  • 常勤役員等の経験
  • 営業所技術者等の資格・経験
  • 財産的基礎
  • 社会保険
  • 営業所の実態

です。

この確認をせずに申請書を作り始めると、途中で「そもそも要件を満たしていなかった」ということになりかねません。

失敗2:取りたい業種を間違える

設備系の会社で特に多いのが、業種選びの迷いです。

たとえば、工場内の設備工事といっても、機械器具設置工事、管工事、電気工事、とび・土工工事など、複数の業種が関係することがあります。

また、元請や取引先から求められている業種と、自社が実際に取得しようとしている業種が合っていない場合もあります。

許可業種を間違えると、せっかく許可を取っても、実際の営業に使いにくい許可になる可能性があります。

失敗3:技術者の資格と業種の対応の判断ミス

「資格者がいるから大丈夫」と思っていても、その資格が取りたい業種に対応していないことがあります。

また、資格がある場合でも、常勤性や専任性の確認が必要になります。

特に次のような場合は注意が必要です。

  • 技術者が役員ではなく外部協力者である
  • 技術者が別会社にも関与している(例:関係会社からの出向受入など)
  • 技術者が現場専任の主任技術者等と兼ねられるか不明
  • 資格はあるが、取りたい業種に対応しているか分からない
  • 実務経験で証明したいが、資料が不足している

失敗4:経営経験を証明する資料が残っていない

社長が長年建設業を営んでいても、過去の実績を証明する資料が残っていないことがあります。建設業許可では、経験を証明するために、登記、契約書、注文書、請求書、決算書、申告書などの資料確認が必要になることがあります。「実際にやっていた」ことと、「申請書類で証明できる」ことは別です。昔の工事資料を探す必要が出てくると、かなり時間がかかります。

失敗5:財産的基礎を資本金額だけで判断してしまった

「資本金が500万円だから大丈夫」と思っていても、現在の財務状況によっては注意が必要です。確認すべきなのは、単なる資本金ではなく、直近決算書における自己資本や純資産の状況です。

赤字が続いている会社や債務超過の会社では、財産的基礎の確認で追加資料(預金残高証明書)が必要になる可能性があります。


失敗6:社会保険の確認を後回しにする

建設業許可では、社会保険の加入状況も確認されます。社会保険の手続がされていなかった場合、許可申請の準備と並行して対応が必要になることがあります。

失敗7:許可取得後の届出管理まで考えていない

建設業許可は、取得後も管理が必要です。毎事業年度終了後の届出、役員変更、営業所変更、技術者変更、5年ごとの更新などがあります。許可を取る段階から、誰が更新期限や毎年の届出を管理するのかを決めておかないと、後で慌てることになります。

事務担当者が社長に報告するときのポイント

社長から「建設業許可を取れるか調べて」と言われた場合、事務担当者の方は、細かい法律論や決算書の内容をすべて説明する必要はありません。まずは、次の5点を整理して報告するとよいです。


1. 許可が必要になりそうな理由

例:当社では、今後500万円以上の工事を受注する可能性があるため、建設業許可の取得を検討した方がよさそうです。


2. 取得を検討する許可の種類

例:当社の建設業の営業所が愛知県内のみであれば、まずは愛知県知事許可を検討することになります。


3. 取得したい業種

例:当社の工事内容からすると、機械器具設置工事、管工事、電気工事、とび・土工工事などが候補になります。
ただし、実際にどの業種を取るべきかは、工事内容と要件を満たす技術者がいるかどうかを確認する必要があります。

4. 社内で確認すべき人・資料

例:社長の建設業経営経験、技術者の資格・学歴・実務経験、犯罪歴の有無、直近決算書、社会保険関係、過去の工事資料を確認する必要があります。

まとめ:建設業許可は申請書を書く前に「社内確認」から始めましょう

建設業許可は、自社で申請することも可能ですが初めて建設業許可を取得する会社では、申請書を作る前に確認すべきことが多くあります。特に重要なのは、次の点です。

  • 愛知県知事許可でよいか
  • 一般建設業許可でよいか
  • どの業種を取るべきか
  • 社長や役員の経営経験を証明できるか
  • 営業所技術者等になれる人がいるか
  • 財産的基礎を満たしているか
  • 社会保険に適切に加入しているか
  • 必要書類を社内で集められるか
  • 許可後の届出管理まで対応できるか

社長から急に「建設業許可を調べて」と言われた担当者の方は、いきなり申請書を作り始めるのではなく、まずは社内の状況を整理するところから始めましょう。

🎁 無料ダウンロード特典:そのまま社内報告できる!「建設業許可取得のための事前確認チェックリスト」

建設業許可の取得を検討するとき、最初につまずきやすいのは、

何を確認すればよいのか分からない
社長に何を聞けばよいのか分からない
必要書類が多すぎて整理できない
どの段階で専門家に相談すべきか分からない

という点です。そこで、当事務所では、社長や上司など社内向けの報告に使える無料資料を用意しました。

社長や上司にそのまま報告できる「建設業許可取得のための事前確認チェックリスト(愛知県知事許可・一般建設業許可を検討する会社向け〜)」

この資料では、次の内容をチェック形式で整理できます。

  • 建設業許可が必要になりそうな理由
  • 取得を検討すべき許可区分
  • 取得したい業種の確認欄
  • 社長・役員の経営経験チェック
  • 営業所技術者等の候補者チェック
  • 財産的基礎の確認欄
  • 社会保険加入状況の確認欄
  • 必要書類の準備状況チェック
  • 社長に確認すべき質問リスト
  • 専門家に相談する前に整理しておく情報

をA4サイズで印刷して社内会議や社長への報告に使える形式です。「まず何から確認すればよいか」を整理したい方は、下記より無料でダウンロードしてみてください。


【免責事項】本記事は、愛知県知事許可による一般建設業許可の新規申請を検討している事業者向けに、一般的な情報を分かりやすく整理したものです。実際に必要となる要件・書類・手続きは、会社の状況、取得する業種、営業所の体制、役員・技術者の経歴、財務状況、申請時点の法令・手引き・審査運用等により異なります。本記事の内容は、個別具体的な許可取得を保証するものではありません。実際に申請を行う場合は、愛知県の最新の手引き・様式・案内を確認のうえ、必要に応じて専門家へご相談ください。

投稿者プロフィール

古井 竜文(たつのり)
古井 竜文(たつのり)(株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。