はじめに:社長から突然こんなことを言われていませんか?

「そろそろ公共工事にも参入したい」
「名古屋市の入札に参加するには何が必要なの?」
「経審とか入札資格とか、ちょっと調べておいて」

中小建設会社の事務担当者の方で、社長や上司からこのように言われて、困っている方も多いのではないでしょうか。公共工事への参入は、単に「入札情報を見つけて申し込む」だけではできません。実際には、

  • 建設業許可
  • 事業年度終了届(決算後の報告)
  • 経営事項審査、いわゆる「経審(ケーシン)」
  • 入札参加資格申請
  • 電子入札の準備
  • 名古屋市独自の登録・手続き

といった複数の手続きを、順番に進める必要があります。

しかも名古屋市の場合、愛知県や他の市町村とは異なる独自の手続きや確認事項があります。名古屋市公式サイトでも、令和7・8年度の競争入札参加に必要な資格、申請時期、申請方法、提出書類等について公示されています。

この記事では、社長から「公共工事について調べておいて」と言われた事務担当者さんに向けて、名古屋市の公共工事入札に参加するまでの流れ、必要書類、費用と期間の目安、よくある失敗を建設業専門の行政書士がわかりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。

1.まず結論|公共工事参入には「経審」と「入札参加資格申請」が必要

公共工事参入の全体像

まずは一般的な話として、公共工事に参加するためには、基本的に次の流れを踏む必要があります。これらを順序立てて進めることで、スムーズに参入できます。

建設業許可の取得・維持

STEP
1

毎年の事業年度終了届(決算の報告書)の提出

STEP
2

経営事項審査(経審)の受審

STEP
3

自治体への入札参加資格申請

STEP
4

電子入札の準備

STEP
5

入札案件への参加

STEP
6

ここでよくある勘違いが、

「建設業許可があれば公共工事に参加できる」
「経審を受ければすぐ入札できる」

というものです。建設業許可があるだけでは、原則として公共工事の入札には参加できません。また、経審を受けただけでも、名古屋市の入札に参加できるわけではありません。
公共工事に参加するためには、経審を受けたうえで、発注機関ごとに入札参加資格申請を行い、名簿に登録される必要があります
名古屋市の公共工事を狙う場合は、名古屋市のルールに沿って、名古屋市の入札参加資格を取得する必要があります。

※愛知県についても、建設工事等の一般競争入札および指名競争入札に参加するためには入札参加資格審査を受ける必要があると案内されています。

2.名古屋市の公共工事入札に参加するまでの具体的な手続・確認事項

名古屋市の公共工事に参加するための手続きは、大きく分けると次の5段階です。

①建設業許可の状況を確認

まず、自社が公共工事で参加したい工種について、建設業許可を取得しているか確認します。例えば、

  • 管工事
  • 電気工事
  • 機械器具設置工事
  • とび・土工工事
  • 建築一式工事
  • 土木一式工事
  • 舗装工事
  • 塗装工事

など、公共工事で参加したい工事の種類と、自社が持っている建設業許可の業種が一致しているかを確認する必要があります。ここで注意したいのは、「会社として建設業許可を持っている」だけでは不十分な場合があることです。例えば、管工事の公共工事に参加したいのに、自社が取得している許可が機械器具設置工事業だけであれば、参加したい案件の内容によっては対応できない可能性があります。

事務担当者さんとしては、まず次の資料を確認してください。

  • 建設業許可通知書
  • 建設業許可証明書
  • 許可申請書の副本
  • 現在取得している許可業種一覧

社長から「名古屋市の公共工事に入りたい」と言われた場合、最初に確認するべきなのは、入札情報ではなく「自社の許可業種の取得状況」です。

②事業年度終了届が毎年提出されているか確認

次に確認すべきなのが、事業年度終了届です。建設業許可を取得している会社は、毎事業年度終了後4カ月以内に事業年度終了届と呼ばれる書類を管轄の建設事務所へ提出する必要があります。公共工事に参加するための経審では、この事業年度終了届の内容が前提になります。

特に次の書類は重要です。

  • 工事経歴書
  • 直前3年の各事業年度における工事施工金額
  • 建設業用決算書(建設業財務諸表)
  • 事業報告書(株式会社の場合)
  • 事業税の納税証明書
  • 使用人数
  • 建設業法施行令第3条に規定する使用人(支店長等)の一覧表
  • 変更がある場合の定款

中小建設会社では、建設業許可を取った後、事業年度終了届の提出が後回しになっているケースもあります。しかし、公共工事に参入する場合、事業年度終了届が未提出のままだと、経審の準備に進めません

事務担当者さんが最初にやるべきことは、

「過去の決算変更届が毎年きちんと提出されているか」

を確認することです。もし提出漏れがある場合は、公共工事の入札以前に、まず事業年度終了届の事後提出から始める必要があります。

Info

もし、事業年度終了届が未提出だった場合は、まず管轄の建設事務所か行政書士に相談してから事後提出をしてください。(いきなりの建設事務所への送付はNGです)

③経営事項審査(経審)を受ける

公共工事への参入で必ず出てくるキーワードが、経審です。経審とは、公共工事を直接請け負おうとする建設業者について、経営状況、技術力、施工実績、社会性などを評価する制度です。経審の結果として、

  • 経営規模等評価結果通知書
  • 総合評定値通知書

が発行されます。この通知書に記載される総合評定値、いわゆるP点が、入札参加資格申請や格付けの基礎になります。経審で確認される主な内容は、次のようなものです。

  • 完成工事高
  • 自己資本額
  • 利益額
  • 技術職員数
  • 登録基幹技能者等の有無
  • 建設機械の保有状況
  • 防災協定の有無
  • 法令遵守状況
  • 研究開発費
  • 建設キャリアアップシステムへの対応状況など

経審は、単に書類を出せば終わりという手続きではありません。どの業種で経審を受けるのか、完成工事高をどのように整理するのか、技術職員をどの業種に振り分けるのかによって、点数やその後の入札戦略に影響します。特に設備系の会社では、

  • 管工事
  • 電気工事
  • 機械器具設置工事
  • とび・土工・コンクリート工事
  • 電気通信工事
  • 消防施設工事

など、実際の工事内容と建設業許可業種の分類整理が難しいケースがあります。このあたりを曖昧にしたまま経審を進めると、後から「本当に取りたい工種で点数が出ていなかった」ということになりかねません。

Info

経審を受けるにあたり、完成工事高(売上高)が重要ですが、経審では移行というものがあり、業種によっては「専門工事⇔建築・土木等の一式工事」「専門工事⇔専門工事」と割り振りを自社で選ぶことができます。どのように割り振るのかは自社が狙う公共工事の業種を決めたうえで移行する割合を決めます。

「経審って何?」という方はこちらの記事シリーズをご参考ください。

①経営事項審査とは?建設業者が知っておくべき基本と目的

公共工事の入札に参加するためには「経営事項審査(経審)」の受審が必須です。しかし、経審の仕組みや目的を正しく理解していないと、点数が低くなり入札資格を失う可能性があります。本記事では、経審の基本から目的、対象業者、申請の […]

④名古屋市の入札参加資格申請を行う

経審を受けた後は、名古屋市に対して入札参加資格申請を行います。ここが非常に重要です。

経審を受けただけでは、名古屋市の入札に参加できません。名古屋市の競争入札に参加するには、名古屋市が定める申請時期、申請方法、提出書類に従って、入札参加資格審査の申請を行う必要があります。

また、愛知県や多くの県内市町村では、「あいち電子調達共同システム」を利用する場面がありますが、名古屋市は名古屋市独自の電子調達システムを確認する必要があります。名古屋市の公式サイトでも、電子調達システムや入札参加者登録システムを含む電子調達システムのページが案内されています。

つまり、愛知県の入札参加資格を取ったからといって、自動的に名古屋市の入札に参加できるわけではありません。名古屋市の案件を狙うなら、名古屋市への申請が必要です。

⑤電子入札の準備を行う

入札参加資格が認められた後は、実際に入札に参加するための準備が必要です。現在、多くの公共工事では電子入札が前提になっています。電子入札に対応するためには、一般的に次のような準備が必要です。

  • 電子証明書、ICカードの取得
  • ICカードリーダーの準備
  • パソコン環境の確認
  • 電子入札システムの設定
  • 利用者登録
  • ID・パスワード管理
  • 入札公告の確認体制づくり

ここで意外と多いのが、

「資格は取れたのに、電子入札の設定が間に合わない」

というケースです。特に初めて公共工事に参入する会社では、電子入札用のパソコン、ブラウザ設定、カードリーダー、電子証明書などの準備に時間がかかります。事務担当者さんとしては、入札参加資格申請と並行して、電子入札の準備も進めておくことをおすすめします。

3. 名古屋市の入札に必要な主な書類一覧

ここからは、事務担当者さんが最も気になる「必要書類」について整理します。このセクションでは、事務担当者の方が一般的に事前に内容と保管状況の確認・準備しておくとよいものも含めて主な関連資料を紹介します。

Warning

実際に提出が必要な書類は下記に列挙した書類すべてではなく、申請年度、申請区分、会社の状況、申請する工種によって異なります。名古屋市のHPでは、競争入札参加者の資格に関する公示として、申請時期、申請方法、提出書類等が掲載されていますので最終的には必ず最新の公示・手引きを確認してください。

建設業許可関係の書類

  • 建設業許可通知書・・・建設業許可を取得した際に送られてくるもの
  • 建設業許可証明書・・・都度、発行を依頼するもの
  • 許可申請書の副本
  • 事業年度終了届の副本(控え)
  • 営業所情報
  • 専任技術者に関する資料

まず、自社がどの業種で許可を持っているかを確認します。

経審関係の書類

  • 経営規模等評価結果通知書
  • 総合評定値通知書
  • 経営状況分析結果通知書
  • 経審申請書の控え
  • 技術職員名簿
  • 工事経歴書
  • 完成工事高に関する資料

経審結果通知書は、入札参加資格申請で非常に重要です。有効期限にも注意が必要です。経審は一度受ければ永久に使えるものではありません。公共工事に継続して参加するためには、毎年の決算後に経審を受け続ける必要があります。

法人関係の書類

  • 履歴事項全部証明書
  • 印鑑証明書
  • 使用印鑑届
  • 委任状
  • 役員情報
  • 営業所情報

本店所在地、代表者、商号、資本金、役員などに変更がある場合は、建設業許可の変更届や入札参加資格の変更手続きも関係します。「定款や登記は変更したけれど、建設業許可や入札資格の変更届を忘れていた」というケースもありますので注意が必要です。

納税関係の書類

  • 愛知県税に関する証明書
  • 名古屋市税に関する証明書
  • 消費税および地方消費税に関する証明書

税金の未納がある場合、入札参加資格申請に影響することがあります。また、納税証明書は取得先や種類を間違えやすい書類です。事務担当者さんが準備する場合は、

「どこの税目について、どの種類の証明書が必要なのか」

を事前に確認してから取得することが大切です。

社会保険・労働保険関係の書類

  • 健康保険・厚生年金保険の加入確認資料
  • 雇用保険の加入確認資料
  • 労災保険関係書類
  • 法定福利費に関する資料

公共工事では、社会保険加入状況や労働関係の法令遵守も重要です。

※社会保険に関する取り扱いは制度改正によって変わることがありますので、申請時点の最新情報を確認する必要があります。

4.名古屋市の入札参加資格申請で注意したいポイント

注意点1|名古屋市は愛知県や他市町村と同じ感覚で進めない

名古屋市の入札手続きで最も注意したいのは、愛知県や県内市町村と同じ感覚で進めないことです。愛知県の建設工事等の入札参加資格申請では、あいち電子調達共同システム、CALS/ECを利用した電子申請が案内されています。

一方で、名古屋市は名古屋市の入札参加資格、公示、電子調達システムを確認して進める必要があります。事務担当者さんとしては、

「愛知県の入札参加資格を取ったから、名古屋市も大丈夫」

と考えないことが大切です。発注機関ごとに必要な申請が異なる、という前提で管理しましょう。


注意点2|申請時期を逃すと参入が遅れる

公共工事の入札参加資格申請には、定時受付や随時受付があります。

申請時期を逃しても随時受付がありますが、名簿登載のタイミングが遅れたり、狙っていた年度・案件に間に合わなかったりする可能性があります。

名古屋市についても、申請年度ごとの公示で申請時期とそれに応じた入札可能時期や方法を確認する必要があります。社長から「来月くらいから名古屋市の入札に参加できないか」と言われても、実際にはすぐに参加できないことがあります。

公共工事への参入は、最低でも数か月前から参入タイミングを考える必要があります。


注意点3|格付け・等級は今後の受注戦略に関係する

名古屋市の入札では、業種ごとに格付けや等級が関係する場合があります。

どの工種で申請するか、経審の点数がどうなっているか、自社の施工実績がどのように評価されるかによって、参加できる案件の範囲が変わる可能性があります。そのため、単に「入札参加資格を取る」だけでなく、

  • どの工種で公共工事に入りたいのか
  • まずは小規模案件から始めるのか
  • 将来的にどのランクを目指すのか

を社内で整理しておくことが重要です。事務担当者さんだけで判断するのは難しい部分ですので、ここは社長や工事部門と相談しながら進める必要があります。


名古屋市の入札情報は「独自システム」をチェック!

名古屋市は、愛知県内の他の市町村と違い愛知県の共同システムに参加していません。案件を探すには、以下の専用サイトを確認する必要があります。

  • 名古屋市電子調達システム 公告の確認、指名通知の受け取り、電子入札のすべてをこの独自サイトで行います。
  • 名古屋市公式HP「入札・契約情報」 名古屋市独自の「発注見通し」や「格付け基準(ランク表)」が公開されています。
Warning

共通システムのICカードがそのまま使える場合でも、名古屋市への「商号・名称等登録(独自IDの取得)」が済んでいなければ、入札の画面すら開けません。早めの登録が肝心です。


名古屋市入札の「3つの特殊ルール」

① 原則の申請時期が「年内」である

愛知県やその他多くの市町村などは「年明け(1月~2月)」に次年度の資格申請(「定時受付」)がスタートですが、名古屋市は「年内(11月~12月)」に申請(「集中受付」)がスタートです。このタイミングでの申請が、特に最初の場合は次年度4月からのの売上を左右します。

② 独自の「格付け(ランク)」算出

名古屋市では、経審の点数(P点)をそのまま使うのではなく、名古屋市独自の「客観的事項数値」を算出します。

  • 社会保険の加入状況
  • 名古屋市公契約条例への適合
  • 環境への取り組み(エコアクション21等)

これらが点数化され、A〜Dなどのランクが決まります。

③ 市内業者・準市内業者の厳格な区分

名古屋市内に「本店」があるか、「営業所(支店)」があるかで、参加できる案件の優先順位が分かれます。

5.手続きの流れ|事務担当者さんの社内用

ここでは、社長や上司に説明しやすいように、公共工事参入までの流れをロードマップ形式で再度整理します。

STEP1|自社の建設業許可を確認する

まずは、建設業許可の有無と許可業種を確認します。確認するポイントは次のとおりです。

  • 許可の有効期限は切れていないか
  • 参加したい工事に対応する許可業種があるか
  • 一般建設業か特定建設業か
  • 営業所情報に変更はないか
  • 専任技術者に変更はないか
  • 役員や所在地の変更届は提出済みか

この段階で変更届の漏れが見つかることもあります。その場合は、経審や入札参加資格申請の前に、建設業許可関係の届出を整理する必要があります。


STEP2|事業年度届の提出状況を確認する

次に、毎年の決算変更届が提出されているかを確認します。確認するポイントは次のとおりです。

  • 直近年度の事業年度終了届は提出済みか
  • 過年度で提出漏れはないか
  • 工事経歴書の内容は実態と合っているか
  • 建設業用決算書は作成済みか
  • 税務申告書と建設業財務諸表の整合性に問題はないか

公共工事参入を考える場合、ここは非常に重要です。決算変更届の内容が不正確だと、経審にも影響します。


STEP3|経審を受ける

事業年度終了届に問題が無いことがわかったら、経審の準備に入ります。経審では、どの業種で申請するかが重要です。例えば、設備系の会社であれば、

  • 管工事
  • 電気工事
  • 機械器具設置工事
  • 電気通信工事
  • 消防施設工事

などの中から、公共工事で狙いたい業種を整理します。このとき、過去の工事経歴、技術者の資格、完成工事高のバランスを確認する必要があります。


STEP4|名古屋市の入札参加資格申請を行う

経審結果通知書が取得できたら、名古屋市の入札参加資格申請を行います。

名古屋市公式サイトでは、令和8年度の競争入札参加者の資格に関する公示として、必要な資格、申請時期、申請方法、提出書類等が掲載されています。 申請の際には、最新の公示・手引きを確認し、自社が申請する区分に応じた書類を準備します。


STEP5|電子入札の準備をする

入札参加資格が認められたら、電子入札に参加できるよう準備を進めます。特に初回は、電子証明書やパソコン設定で時間がかかることがあります。

「資格は取れたが、電子入札システムの設定が間に合わない」

ということがないように、早めに準備しておきましょう。

6.費用と期間の目安

公共工事参入までにかかる費用と期間は、会社の状況によって大きく異なります。ここでは、事務担当者さんが社内でざっくり説明するための目安を整理します。

費用の目安

公共工事参入に関係する費用には、次のようなものがあります。どこの業者を使うかにより若干の幅がありますのでよくあるパターンの税込概算額です。

  • 経営状況分析手数料(約9,000円~約14,000円)
  • 経審に関する行政機関の法定審査手数料(8,500円+2,500円×申請業種数)
  • 登記事項証明書、納税証明書などの取得費用(約1,000円)
  • 電子証明書付ICカード取得費用(1年あたり10,000円~17,000円程度)
  • ICカードリーダー購入費用(約10,000円)

これらが自社で全ての手続きをする場合にかかる費用の概算です。行政書士へ依頼する場合は報酬額として10~20万円程度(※)が追加でかかります。

※:行政書士へ依頼する場合の報酬は、依頼範囲によって異なります。例えば、

  • 事業年度終了届のみ
  • 経審申請のみ
  • 入札参加資格申請のみ
  • 決算変更届から経審、入札資格まで一括対応
  • 公共工事参入の年間スケジュール管理

など、どこまで依頼するかによって費用はかなり変わりますので行政書士に依頼する場合はどこまでの業務が含まれているのかを必ず見積もりをとってその明細で確認しましょう。

期間の目安

  • 建設業許可・変更届の確認:数日〜数週間
  • 事業年度終了届の整理:1〜3週間程度
  • 経審の準備・申請:2〜3か月程度
  • 入札参加資格申請:申請時期により変動
  • 電子入札の準備:2週間〜1か月程度
  • 実際の入札参加:名簿登録後

すべてが順調に進んでも、初めて公共工事に参入する場合は、4か月以上、できれば半年程度は見ておいた方が安全です。建設業許可の変更届漏れ、決算変更届の未提出、経審未受審、電子入札環境未整備など不備がある場合は、さらに時間がかかります

7.よくある失敗

最後に、公共工事参入でよくある失敗を紹介します。

失敗1|経審だけ受ければ入札できると思っていた

経審は公共工事参入に必要な重要手続きですが、経審だけで入札できるわけではありません。経審を受けた後、名古屋市など発注機関ごとに入札参加資格申請を行う必要があります。


失敗2|事業年度終了届が未提出だった

建設業許可は持っているものの、毎年の決算変更届が提出されていないケースが意外とあります。この場合、経審の準備に入る前に、まず未提出分の決算変更届を整理する必要があります。特にこの未提出のリカバリーは公共工事参入のスケジュールが大きく遅れる原因になります。


失敗3|名古屋市と愛知県の手続きを混同していた

愛知県の入札参加資格と名古屋市の入札参加資格は別に考える必要があります。愛知県はあいち電子調達共同システムを利用した電子申請を案内していますが、名古屋市は名古屋市の公示や電子調達システムの確認が必要です。

「愛知県の資格を取ったから名古屋市も大丈夫」

と思い込まないようにしましょう。


失敗4|申請時期が遅れた

入札参加資格申請には受付期間(集中受付)があります。集中受付期間を逃しても随時受付はされていますが名簿登録が遅れたり、参加したかった案件に間に合わなかったりする可能性があります。特にある特定時期に入札したい案件がある場合は注意が必要です。社長から急に言われた場合でも、事務担当者さんとしては、

「すぐに入札できるとは限らない」

と説明できるようにしておくことが大切です。


失敗5|電子入札の準備が間に合わなかった

入札参加資格が取れても、電子入札環境が整っていなければ、実際の入札に参加できません。ICカード、カードリーダー、パソコン設定、利用者登録などは、早めに準備しておきましょう。

事務担当者さんがまず最初に確認すべきチェックリスト

社長から「公共工事を調べて」と言われたら、まず次の項目を確認してみてください。

□ 建設業許可を持っている

□ 参加したい工種に対応する許可業種がある

□ 許可の有効期限が切れていない

□ 役員・所在地・営業所などの変更届に漏れがない

□ 事業年度終了届を毎年提出している

□ 工事経歴書の内容を確認できる

□ 建設業財務諸表を作成している

□ 経審を受けたことがある

□ 経審結果通知書の有効期限を確認している

□ 名古屋市の入札参加資格を取得している

□ 電子入札に必要なICカード等を準備している

□ 社内で公共工事の担当者・責任者が決まっている

このチェックリストのうち、未確認の項目が多い場合は、公共工事参入までに一定の準備期間が必要です。


まとめ|名古屋市の公共工事参入は「初動」が重要です

名古屋市の公共工事に参加するためには、建設業許可、事業年度終了届、経審、入札参加資格申請、電子入札準備といった複数の手続きを順番に進める必要があります。特に初めて公共工事に参入する会社では、

  • 何から始めればよいかわからない
  • 必要書類が多くて整理できない
  • 経審と入札参加資格の違いがわからない
  • 名古屋市と愛知県の手続きの違いがわからない
  • 社長にスケジュール感を説明できない

という悩みが出やすいところです。公共工事は、準備が整えば中小建設会社にとって新たな収益機会になります。一方で、手続きの順番を間違えたり、申請時期を逃したりすると、参入までに大きく時間がかかってしまいます。

社長から「公共工事を調べて」と言われた事務担当者さんは、まずは全体のロードマップを把握し、自社が今どの段階にいるのかを確認することから始めましょう。


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  • 公共工事参入までの全体スケジュール
  • 建設業許可・決算変更届・経審・入札参加資格の関係
  • 名古屋市で注意したい手続き
  • 事務担当者向け必要書類チェックリスト
  • 社内で確認すべきポイント

をわかりやすく整理しています。社長や上司への説明資料としても使いやすい内容です。公共工事参入を検討し始めた段階の会社様は、まずは無料資料をダウンロードして、自社の準備状況を確認してみてください。


【ご参考】名古屋市の公共工事の特徴

名古屋市の公共工事の特徴は、「巨大な予算規模」と「緻密な格付け・ルール化」、そして「社会的価値の重視」にあります。

愛知県の県庁所在地であり政令指定都市である名古屋市は、他市とは比較にならないほど発注件数が多く、リニア中央新幹線開通に向けた駅周辺の再開発や、老朽化した上下水道・橋梁の長寿命化対策など、大規模プロジェクトが目白押しです。

入札制度における最大の特徴は、独自の「客観的事項(格付け)」の厳格さです。 業者はその経営規模や施工実績に基づき、各工種ごとに「A・B・C・D」といったランクに細かく分類されます。このランクごとに、参加できる工事の金額範囲が明確に決まっているため、「どのランクを維持・狙うか」という戦略が受注を左右します。

また、「名古屋市公契約条例」などに基づき、労働条件の確保や環境配慮(環境デーなごやへの協力)、地域貢献(災害時の協力体制)などが評価項目として非常に重視されます。特に「ワーク・ライフ・バランス推進企業」の認定など、企業の姿勢そのものが加点対象となるため、事務面でのコンプライアンス対策も重要です。


【免責事項】本記事は、名古屋市の公共工事への参入を検討されている建設業者様向けに、入札参加資格申請や経営事項審査(経審)等の一般的な手続きの概要を説明することを目的として作成しています。記事掲載時点での法令、制度、公表資料等に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。実際に申請を行う際は、必ず名古屋市その他関係機関が公表する最新の公示、申請要領、手引き等をご確認ください。本記事の内容を利用したことにより生じた損害、損失その他の不利益について、当事務所は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

投稿者プロフィール

古井 竜文(たつのり)
古井 竜文(たつのり)(株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。