古井

建設業の事務管理を担当されている方にとって、建設業許可の申請や更新は、避けて通れない重要業務のひとつです。特に「経営業務の管理責任者(経管)」や「令3条使用人」「支配人」といった制度は、専門用語も多く理解しづらい部分があります。

本記事では、「常勤役員等としての経験年数」にカウントできる“令3条使用人”と“支配人”とは何かについて、事務管理担当の方が実務で判断しやすいよう、できる限り分かりやすく解説します。

建設業許可に必要な「経営業務の管理責任者」の経験要件

建設業許可では、次のいずれかの経験が必要です。

  • 経営業務の管理責任者(経管)としての経験(5年以上)
  • 経管を補佐する立場としての経験(6年以上)

しかし、企業の役員であれば誰でも経験にカウントできるわけではありません。そこで登場するのが 「常勤役員等」 という概念です。

「常勤役員等」とは?

以下のいずれかに該当する者を指します。

  • 株式会社の取締役
  • 合同会社の業務執行社員
  • 有限会社の取締役
  • 令3条使用人
  • 民法上の支配人

つまり、役員でなくても「令3条使用人」または「支配人」であれば、経験年数に算入できるということです。


「令3条使用人」とは?

法律上の定義(建設業法施行令第3条)

建設業法施行令3条に定められている使用人(取締役等の役員ではない)ことから令3条使用人と呼ばれています。その令3条では、次のように定められています。

支店・営業所において、その事業を代表する権限を持つ使用人

ここで重要なのは、次の2点です。

①「事業を代表する権限」を持っていること

具体的には、

  • 契約締結権限を持っている
  • 会社を日常業務で代表できる
  • 受注・見積・発注などの意思決定ができる

といった立場である必要があります。名ばかりの“主任”や“管理職”では不可です。

② 労働者でも役員でもよいが「常勤」であること

課長・所長などの立場で働く従業員でも、会社との間で委任契約等を締結し、代表権限が付与されていれば「令3条使用人」になれるという点も特徴です。


「支配人」とは?

支配人は、民法第21条〜28条で定義されている立場です。

支配人のポイント

  • 本店・支店において営業に関して包括的な権限を持つ
  • 契約締結権限が法律上付与される
  • 商業登記簿に「支配人」として登記される必要がある

令3条使用人と似ていますが、支配人の方が強い法的権限を持っています。

支配人のメリット

  • 登記上明確で証拠力が高い
  • 建設業許可の審査で説明がしやすい
  • 役員ではない従業員でも経験年数に加算できる

ただし、支配人登記は法的拘束力が強く、企業にとって負担も大きいため、実務上は採用例が少ないのが実情です。


経験年数として認められる条件とは?

1. 「適切な権限」があること

  • 契約締結権
  • 見積・受注・発注の決裁権
  • 営業所のマネジメント権限

これらが社内規程、辞令、委任状、職務権限規程などで明確になっている必要があります。

2. 「常勤性」が証明できること

  • 社保加入状況
  • 給与支払い
  • 就労実態
  • 出勤状況

建設業許可審査では非常に重視される部分です。

3. 審査側に「証明」ができること

実際には、以下の書類を求められるケースが多いです。

  • 辞令
  • 経験証明書
  • 会社の組織図
  • 契約書類(契約締結権限の有無を確認)
  • 事務所の写真
  • 社保の加入状況を示す書類

証明するための書類をしっかりと残し、経験年数を事前にしっかり保存し整理しておかないと、申請の直前で「経験年数が足りない」という事態にもつながります。


「令3条使用人」「支配人」を活用するメリット

① 役員経験がない人も経験年数に換算できる

現場出身で管理実務に精通している人材を経管候補として育てられます。

② 会社の組織に合わせた柔軟な人事が可能

中小企業でも、役員登記を増やさずに経管候補を育成できます。

③ 実務の実態に合った経験として扱える

実際に現場や営業所を管理してきた従業員を、正当に評価できます。


事務担当者がやっておくべきこと

1. 組織図を作成し、権限範囲を明確にしておく

辞令や職務権限規程の整備は必須です。

2. 候補者ごとの経験年数を一覧化

  • いつから令3条使用人なのか
  • どの職務を担当してきたのか
  • 契約締結などの権限の有無

後から証明するのは非常に大変です。

3. 役員か令3条使用人か、どちらで申請すべきか検討

状況によって最適解は異なります。


まとめ

  • 令3条使用人・支配人は、常勤役員等と同じく経験年数に算入できる重要なポジション
  • ポイントは「代表権限」と「常勤性」
  • 証明書類の整備ができているかが審査の分かれ目
  • 役員登記をしなくても経管候補を育成できるメリットが大きい

建設業許可は制度が複雑で、経験要件の整理に悩む企業は非常に多いです。もし、「今の候補者で経験年数が足りるのか不安」「令3条使用人で証明できるか判断してほしい」などがあれば、専門家による事前チェックがおすすめです。特に事業承継を見据えている場合は「今のうちに聞いておいてよかった」と言われることも多いです。

投稿者プロフィール

古井 竜文(たつのり)
古井 竜文(たつのり)(株)MTM / MTM行政書士事務所 代表
自動車グループ系総合商社を親会社とする機械商社(建設業許可保有)でのリスク管理・法令遵守体制構築の経験を活かし、行政書士として建設業許可の手続から関連法令対応のご相談、契約書の作成・審査、経審対策まで対応しています。